養育費は何歳までいつまで請求可?18歳?20歳?相場と決め方を解説
養育費を支払う側・受け取る側双方にとって大きな問題となる養育費の終期。この記事では、養育費をいつまで支払えば良いのか…[続きを読む]
離婚で気にかかることの一つが「養育費」のことです。
養育費の算定は、算定表というものを用いれば簡単に割り出すことができます。
しかしここで問題なのが、学費(教育費)や医療費などの個別事情をしっかり考慮して増額できるのかということです。
今回は、離婚における養育費の算定方法と入学金、大学の入学から卒業までの費用や義務はあるのか、何歳まで請求できるか、拒否されるとどうすればいいのか、保育料などの学費は含まれるか、教育費(塾代、給食代など)、養育費とは別に学費が請求できるか、調停や審判、強制執行までについて解説します。
そもそも養育費とは具体的にどのようなものを指すのでしょうか。
養育費とは、離婚の際、監護している親から監護していない親に対し請求する、未成熟の子どもを養育するために必要な費用のことです。
具体的には、教育・塾などの習い事に関する費用はもちろんこと、衣食住などにかかる生活費、医療費、娯楽費用なども養育費として請求することができます。
つまり養育費とは、子どもの養育にかかるほぼ一切の費用が含まれており、その中に学費・教育費も含まれます。
しかし、一部含まれないものがありますが、これについては後述します。
一般的には、子どもが精神的・経済的に自立可能とみなされる成年(20歳)*までとされます。
*民法改正によって、2022(令和4)年4月1日以降は「満18歳が成年」となりましたが、養育費の終期に影響しないことが裁判所サイトで公表済みです。
しかしこれはあくまで目安です。
実際には、夫婦間での話し合いの結果、高校卒業までとする家庭もあれば、大学卒業までは養育費を請求する家庭もあります。
最近では、大学進学率も高くなっているため、大学卒業までとするケースが増えてはいますが、相手が拒否するケースも多いです。
養育費の金額を決定する際の基準として利用できる「養育費算定表*」と呼ばれるものがあります。
養育費の算定票は、東京と大阪の裁判所が作成したものであり、実際の裁判でも参考資料として使用しているものです。
裁判所が用いる算定表を使えば、標準的な養育費の額も計算ができます。
また、当サイトにおいても「新算定表」に基づいた養育費自動算定ツールを公開しておりますので、併せてご参考ください。
*https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html
しかし、算定表での計算はあくまで「金額相場」が計算できるだけであり、注意点があります。
養育費算定表は、収入と子どもの年齢から標準的な養育費の額が計算でき、その算定金額の中には「学費」「学校教育費」も含まれた金額を自動的に計算することができます。
養育費の算定表が主に考慮しているのは、以下2点のみです。
これだけでは実際の事情を反映した養育費の額を算定することは難しいことが理解できるかと思います。
そして、学費部分に関しては、あくまで「平均的な公立高校までの学費」と「平均的な諸経費」のみを含めたと仮定して算出されます。
つまり「大学入学から大学卒業までの費用」「私学中学・高校に進学した場合の費用」「高校卒業後の専門学校」などは含まれず、支払い義務があるとも言えません。
一方、子供が公立の小学校に入学する際にかかる、制服代や学用品なども特別な費用というわけではなく、通常かかるものとして想定されており、算定表を用いた計算では含まれます。
先述した通り、養育費の言葉の意味としては、教育・塾などの習い事に関する費用や生活のすべてにかかる費用が含まれるのですが、相場となる算定表での計算では「特別費用」が含まれないのが現状です。
特別費用は前述した大学の費用や私学費用などがそれにあたります。また、他にも下記のようなものが代表的と言えるでしょう。
繰り返しになりますが、相場である算定表を利用した場合に計算に含まれないだけであって、上記の特別費用も夫婦間での話し合いの結果請求可能なことは念頭においてください。
*公開年月日2019年12月18日:https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00400201&tstat=000001012023&cycle=0
まずは下表を御覧ください。スマートフォンでご覧の方は、右側にスワイプすればすべての内容が見れます。
幼稚園 | 小学校 | 中学校 | 高校(全日制) | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
公立 | 私立 | 公立 | 私立 | 公立 | 私立 | 公立 | 私立 |
139,752 | 362,258 | 106,830 | 951,802 | 181,906 | 1,075,169 | 280,487 | 719,051 |
上表で示す金額は「学校教育費+学校給食費*」の総額で、単位は「円」となります。
学校教育費の中には、授業料はもちろん、修学旅行積立金や遠足代、PTA会費、教科書費、通学費、制服代金などが含まれます。
*ただし「高校(全日制)」の項目において、金額内に給食費は含まれていません。そのため「昼食の費用」が別途発生します。
上記で解説した養育費算定表を用いた計算の場合、「平均的な公立高校までの学費」のみが含まれているので、子供が私立学校に入学する場合、もしくはすでに入学している場合は平均的な学校教育費に加えて、「特別費用」を加算する必要があります。
なお、相場となる算定表で考慮されている平均的な公立高校までの学費については、上表を考慮しているわけではなく「0歳から14歳の場合は、年間13万1379円、15歳以上は25万9342円*」として計算しております。
*「養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究」に対する意 https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/document/opinion/2020/opinion_201118.pdf
つまり、養育費算定表は一定の目安になりますが、あくまで標準的・最低限のものであり、個別事情はこの表では考慮できないため、目安程度に考えておく方が賢明です。
ここまでの解説でご理解できたかと存じますが、養育費の特別費用の相場というものはありません。
あくまであるのは、裁判所の「養育費の算定表」で計算した養育費の相場のみです。
そのため、実際に離婚時に計算するときにはご自身で計算する必要があります。もしくは計算しても相手が拒否してくるケースが有るため、最初から離婚に強い弁護士に相談するケースが多いのです。
また、実際に、学費・特別費用の約束を取り決めても、相手の生活状況によっては、支払われないケースも多いです。
その際には、強制執行の手続きを取るようになります。
こちらについては別途ページに解説は譲りますが、離婚前の方であっても、参考になる情報ですので、併せてご参照ください。
また養育費未払いの無料相談窓口も併せてご利用ください。
先述した通り、養育費算定表はあくまで金額相場です。
最終的な取り決めは、調停や審判などを行わない限りは、夫婦間の話し合い・合意ですべてが決定します。
具体的には、想定される教育費の金額を根拠を持って、夫に示すなど資料の作成が必要になります。
教育費・医療費などの特別な事情がある場合には、どのくらいの負担が「公平かつ妥当か」という基準で算定していくことになります。一般的な手順は下記のとおりです。
なお、必ずしも特別費用全ての負担を義務者に課せるというわけではないので、相手から「拒否したい」と言われれば、拒否されるケースも多いでしょう。
夫婦間で揉めそうなことがあらかじめ想定できるのなら、早い段階で「離婚に強い弁護士」に相談したほうが良いでしょう。
養育費については、実は不払いのリスクを考えなければいけません。現在養育費の支払い義務がある方の不払いは全体の80%という報告もあります。
不払いになってしまった場合、内容証明郵便で履行を促す、裁判所から履行命令や強制執行を出してもらう、などの対処法はあります。
しかし、経済的事情、例えば会社をクビになった、病気で働けないなどの事情がある場合はどうしようもありません。
そのため、特別な出費・費用を負担してもらう場合には、「継続して支払ってもらえる額に設定すること」が極めて重要となります。
子どもが小さい場合には、10年15年と支払ってもらわなければいけません。養育費の額が低すぎると考える場合には、長期間支払える額であるのかという点も頭の片隅に入れておくことが大切です。
離婚する際には、その取り決めをまとめた「離婚協議書」を作成します。
この際に子供がまだ幼く、将来にいくらかかるか分からないケースもかなり多いと思われます。
その場合「医療費や学費など、特別な費用を要する場合は、互いに誠実に協議して分担額を定める」といった、条項を必ず記載しておいてください。
別途、離婚協議書には「本件離婚に関し、今後財産上の請求をしない」といった「清算条項」を加える事が多いため、上記のような条項を加えないと、まったく請求できなくなる可能性もあるため、文言を忘れずに記載すべきでしょう。
大学卒業までを請求する際にも、離婚協議書に条項を加えることを忘れないようにしましょう。
大学卒業までの書き方については、下記のとおりです。
これに加えて請求する期間などを記載します。
なお、当サイトには離婚協議書を自動で作成できる離婚協議書メーカーも設置してあります。
上記のような条項が自動的に記載されて抽出されるので、一度お試しください。
養育費の特別費用について話し合いがまとまらない場合は、調停・審判を申し立てるほかありません。
なお、両親が大卒であるなどの場合は、調停・審判でも大学での教育費について支払義務が肯定される傾向にあります。
逆に言うと「養育費の大学費用の支払いを拒否したい」と考えている方は、配偶者に調停などを申し立てられるケースが多いというわけです。
調停・審判について詳しい内容は別途ページで解説しますが、調停を申し立てる場合は、原則弁護士に一度相談したほうが良いでしょう。
養育費の特別費用について義務か、相場はいくらか、拒否できるか、その内容などについて解説しました。
養育費はさまざまな個別事情を考慮しなければならず、算定が難しいと考えてしまいがちですが、算定表を利用すれば一定程度の目安はわかるため大変便利です。しかし、収入等の事情以外に、特別な出費がある場合には、個別考慮が必要不可欠となります。
また、離婚での養育費の話し合いで平行線になってしまうケースもあるでしょう。こちらが希望する額に納得してくれない、相手の提示する額が低すぎる、といった場合はなかなか話し合いが進まず、スムーズに離婚できないという結果になってしまいます。
養育費についてお悩みの方は、専門家に相談することから始めましょう。