偽装離婚って犯罪なの?メリットとデメリットをわかりやすく解説

「偽装離婚」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
最近では、保育園に入るために偽装離婚をする人が年々増加する傾向にあります。
でも偽装結婚って犯罪じゃないの?大丈夫なの?と思う方もいらっしゃることでしょう。
今回はそんな方のために、偽装離婚に関する基本的な知識からメリット・デメリットまで詳しく解説していきます!
目次
偽装離婚って?
「偽装離婚」とは一体何なのでしょうか。
それは、実際に離婚するつもりはないにも関わらず離婚届を提出することです。
法的には離婚が成立していることになりますが、住民票を移していながら同じ家に住んだり、実際に別居している場合でも頻繁に会うなどして夫婦生活を維持する状態にあることから「偽装離婚」という名前で呼ばれています。
偽装離婚の目的(メリット)とは
離婚する意思がないにも関わらず、なぜ偽装離婚をするのでしょうか。
主な目的は以下のとおりです。
不正受給をするため
生活保護や児童扶養手当といった行政上の支援を受給するために、偽装離婚をする夫婦が存在します。
実際に離婚すると、生活保護やその他の公的保護が受けやすくなるのは事実です。
離婚後は夫婦の収入がそれぞれ分けられるため、生活保護を受けることができるか否かは個人の収入を元に判断されます。
そのため、独り身のほうが生活保護の許可を受けやすくなるのです。
特に子供がいる母親の場合にはシングルマザーと判断され、母子家庭手当ての受給が可能になるなど、他の公的保護も受けやすくなります。
財産隠しをするため
借金の返済が滞ってしまった場合、土地や自宅などの財産を強制執行されてしまうことがあります。
また自己破産という道を選んだ場合にも、破産者の財産は全てなくなってしまいます。
離婚した相手に予め財産分与として土地やお金を渡しておくと、その土地やお金には強制執行されず、財産を確保しておくことができます。
そのため、偽装離婚という手段をとる夫婦が存在するのです。
経歴のロンダリングをするため
多重債務や借金の返済滞納により、クレジットカードなど金融機関のブラックリストに入ってしまうことがあります。
この場合、偽装離婚により経歴のロンダリングを行うことでブラックリストから逃れ、またお金を借りることが可能になります。
子供を保育園に入園させるため
「待機児童問題」という言葉を耳にしたことはないでしょうか。
子供を保育園に入園させたくても入園できないという状況が続き、特に都市部では深刻な状況になっています。
「なんとかして子供を預けて共働きをしないとやっていけない…。」
そんな追いつめられた夫婦が、保育園に子供を預けやすくするために偽装離婚を選ぶことが増えています。
偽装離婚ってバレないの?
まず結論から言ってしまいますと、偽装離婚は結局バレてしまうケースが多いです。
実際どのようにして偽装離婚をしているということがバレてしまうのかは、主に以下の2つが挙げられます。
ケースワーカー・生活保護Gメン
生活保護を受給すると、「ケースワーカー」という職員が生活状況を確認しに連絡なしに訪問してきます。
訪問回数は月に数回程度ですが、もし不正受給の疑いがあると判断された家庭に対しては頻繁に観察されることになります。
このケースワーカーの訪問によって、偽装離婚の事実が発覚するケースも多いです。
また、生活保護の不正受給を暴くことを目的とする専門家である「生活保護Gメン」という人によって発覚することもあります。
地域の住民や保育園関係の人から通報
離婚したとは思えないような生活状況を送っていることを、不審に感じた近所の人による通報で発覚することもあります。
近所の人の通報なんてありえない…と思われがちですが、実際にどこかから情報が漏れて通報されてしまうことがよくあるのが現実です。
また、子供を保育所に入園させるために偽装離婚を行った場合には、他の保護者など保育園で関わりのある人からの通報で発覚することもあります。
偽装離婚がバレたらどうなるの?
では、偽装離婚の事実がバレてしまった場合にはどうなるのでしょうか?
まず、どんな目的であっても偽装の離婚届を出したことになりますので、「公正証書原本不実記載等罪」という刑事罰を問われることになります。
この場合、刑法157条1項により5年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます。
以下、他に考えられる対応や科せられる刑事罰を目的ごとに確認していきましょう。
生活保護不正受給の場合
生活保護やその他公的保護の受給を目的として偽装離婚をした場合には、支給の打ち切りと支給額の返還請求が行われます。
この際、支給された全額の返還が必要となります。
また、実際に偽装離婚をもとに生活保護等を不正に受け取った場合、詐欺罪にあたります(刑法246条1項)。
借金逃れ
土地や家屋といった財産を守りたいという気持ちから、借金による強制執行から逃れるために偽装離婚をした場合、「財産の隠匿行為」と見做されます。
強制執行されると借金が全額なくなることが普通ですが(これを破産免責といいます)、財産の隠匿行為をすることで破産免責がされなくなり、借金が残ることになってしまいます。
また、刑事告訴された場合には
- 強制執行妨害罪(刑法96条の3第1項)…3年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金又はそれらの併科
- 詐欺破産罪(破産法265条1項)…10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金又はそれらの併科
が科せられます。
経歴のロンダリング
クレジットカードなどのブラックリストから逃れるため、経歴のロンダリング目的で偽装離婚をする場合もあります。
ロンダリングした経歴をもとに金融機関から借り入れを行うと、詐欺罪(刑法246条1項)に問われ、10年以下の懲役が科せられる可能性があります。
そもそも離婚によって名字が変わっていたとしても、同居しているために現住所が同じだったり保証人が同じだとすぐにバレてしまうのが現状です。
保育園に入るためだった場合
子供を保育園に入所させるために偽装離婚をした場合、保育園から退所させられる可能性が高くなってしまいます。
この場合も公正証書原本不実記載等罪に該当しますが、あくまでも不正に子供を入所させたというだけで金銭的な利益を受けているわけではありませんので、これ以外で犯罪にあたることはないでしょう。
とはいえ、何の罪もない子供にも辛い思いをさせてしまうことになります。
偽装離婚のリスク
偽装離婚は公正証書原本不実記載等罪のほか、目的によって様々な罰則を受けることがわかりました。
では、罰則を受ける以外のリスクはどのようなものがあるのでしょうか?
社会的信用の低下
生活保護などの不正受給や経歴ロンダリングのために偽装離婚をしていたという事実がバレてしまった場合、近所の人や親戚など世間の目が冷たくなることは避けられません。
金銭的な罰則ではなくとも、実際日々の生活を送るうえで精神的な負荷は非常に重いものとなるでしょう。
子供への影響
親が不当利得をしていることが教育上良くないということは、いうまでもありません。
近所の住民や親戚に偽装離婚の事実がバレてしまった場合、何も知らない子供への風当たりも強くなるかもしれません。
また、もしも刑事罰で訴えられてしまった場合には、大切なお子さんが一生「前科者の子供」になってしまうということは忘れないようにしてください。
仕事がクビになる
刑事罰で訴えられ前科者となってしまった場合には、職場にクビにされてしまう可能性も大きいと言えます。
金銭的利益を得るために偽装離婚をしたのに、仕事を失っては元も子もありません。
支払わなくてはならないお金が出てくる
生活保護の受給など、金銭的なメリットを目的とすることが多い偽装離婚ですが、盲点となるのが税金の支払いです。
離婚によって妻が夫の扶養から外れると、住民税などの税金を重複して払わなくてはならなくなります。
夫(妻)が知らない間に再婚してしまう
偽装離婚という名目で離婚前と変わらない生活を続けていたとしても、法的に婚姻関係にないことには変わりありません。
そのため、偽装離婚をしてしまった後に相手がいつの間にか再婚していた…ということが起きる可能性も払拭できません。
まとめ
今回は、偽装離婚についてご紹介しました。
偽装離婚はお金が楽に手に入る、子供を保育園に入園させやすいなどというメリットがあるのは事実です。
しかしそうしたメリットよりも、リスクやデメリットの方がはるかに大きいことがわかっていただけたかと思います。
金銭面や子供の育児に関することなど何か困ったことがある場合には、専門機関や弁護士などに相談し、偽装離婚はしないようにしましょう。