新型コロナ対策の現金10万円、DV被害者はどうすれば受け取れる?

政府は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急経済対策として、国民1人につき10万円の現金給付をすることを閣議決定しました。
しかし、この閣議決定には賛否両論、様々な声が寄せられています。
特に、世帯主による一括申請という部分に関して多くの批判があります。
例えばTwitterでは、ハッシュタグで「#世帯主ではなく個人に給付して」、「#世帯分離」がトレンド入りするなど、下記のようにDV被害にあう妻や子供が国からの給付金を受け取れないことを問題視する声が相次いでいます。
- 配偶者や子供は世帯主の持ち物ではない
- 一人一人の命に届くように
- DVへの国家的加担
- ハラスメントに怯えて暮らす妻子の命を守ってほしい
そこで今回は、DV被害を受けている方が給付金を受け取るためにできることを紹介していきます。
目次
現在の日本の給付金の方針とDV被害の関係
まずは、現在政府が提示している政策はどのようなものであるのか、またその政策がDV被害を受けている方へどのような影響を与えるのかについて解説していきます。
令和2年5月1日時点の日本の給付金の方針
令和2年4月20日、日本政府は「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」を閣議決定し、特別定額給付金を実施することとしました。
給付対象者は令和2年4月27日において住民基本台帳に記載されている人で、受給権者(申請する人)は給付対象者の含まれる世帯の世帯主とされています。
給付額は給付対象者1人につき10万円で、申請方法としては郵送方式とオンライン方式の2通りがあります。
住民基本台帳への登録さえあれば、外国人やホームレスの方も受け取ることができます。
【参考】総務省:特別定額給付金(新型コロナウイルス感染症緊急経済対策関連)
【参考】総務省:特別定額給付金の特設サイト
その他、特別定額給付金についての詳細や分かりやすい解説はこちらの記事をお読みください。
現在の方針の課題とDV被害者との関係
では、上記の方針にはどのような課題があり、DV被害者の方にはどのような影響があるでしょうか。
繰り返しになりますが、政府の出した政策では、給付金は世帯主の一括申請で、世帯主の金融機関の口座に一括で振り込まれるとされています。
この方式の場合、以下の点が問題になります。
- 離婚協議中やDVなどの事情により、世帯主の手から自分の元に現金が渡ることが望めない人がいる
- DV被害により住民票の住所と異なる場所で暮らす人が現金を受け取ることができない
- DV被害者に関しては、世帯主を通しての給付で支配関係が強まり、新たなDV被害を生んでしまう可能性もある
実際に、2009年のリーマンショック後の経済対策として行われた定額給付金の事業でも、受け取れない人からの相談は多く、独自支給を求めた自治体もありました。
このように、世帯主との関係性によりお金をもらえない人や、世帯主から逃れている人、更には虐待により家にいられない子供にお金が行き渡らないことは、大きな課題であると言えるでしょう。
DV被害者等が給付金を受け取るには?
では、上記のような状況であっても、給付金を受け取る手段はあるのでしょうか。
政策として全く対処されていないわけではなく、受給にあたって例外的な措置も定められています。
ここでは、DV被害を受けている方などが受給するための2つの手段をご紹介します。
DV被害者が自分で受給できる例外的な措置
総務省は、以下のいずれかの場合で、後述する一定の要件を満たせば、住民票と異なる自治体での受給を認めるとしています。
この場合、DVを行っている配偶者等(世帯主)からの申請に対しては給付されません。
- 配偶者からの暴力を理由に避難していて、諸事情により2020年4月27日までに住民票を移すことができない人
- 基準日の翌日以降に発生した配偶者からの暴力を理由として避難している人
つまり、DV被害を避けるため別の場所に居住していて、住民票を移していない方は、下記一定の要件を満たせば居住している自治体で給付の対象となる、ということです。
では、どのような場合に一定の要件を満たせるのでしょうか。
例外措置の一定の要件
一定の要件とは、簡単に言えば、相手から暴力を受けていることを証明するものを指します。
具体的には以下の3点のうちいずれか1つでも当てはまればいいとされています。
- 申出者の配偶者に対し、配偶者暴力防止法10条に基づく接近禁止命令または退去命令が出されていること。
- 婦人相談所等の配偶者暴力対応機関による「配偶者からの暴力の被害者の保護に関する証明書」や確認書が発行されていること。
- 基準日の翌日以降に住民票が居住市町村へ移され、住民基本台帳事務処理要領に基づく支援措置の対象となっていること。
しかし、この証明を簡単にできる人ばかりではありません。
ただ、証明できればご自分の居住している自治体で受給できます。
総務省から自治体に向けた文書は2020年4月22日に発出されていますので、今後ご自分が受給するにはどうすればいいか気になる方は、自治体へご確認ください。
例外措置の申出期間
当初、この例外措置の申出期間は2020年4月30日までとされていましたが、5月1日以降でも継続して申出書を提出することが可能です。
【参考】総務省:配偶者からの暴力を理由に避難している方の申出の手続き(PDF)
世帯分離
もう1つの方法として「世帯分離」というものがあります。
冒頭で紹介したように、Twitterのトレンド入りをしているこの言葉ですが、いったいどのようなものなのでしょうか。
世帯分離とは、簡潔にいうと「引越しをすることなく、今の世帯から世帯員を分けて新しい世帯を作ること」をいいます。
現金給付の申請の権利を得ることができるという点に関しては、非常に有効な手段のように感じます。
しかし、住民票取得の手間、国民健康保険の負担の増加、扶養手当の喪失など、様々なデメリットもあります。
一定のデメリットを伴うため、実際に世帯分離を行うかどうかに関しては、本当に世帯分離をすることが自分にとって利益のあることなのか、ということを考慮してから行動に移すことをお勧めします。
まずは窓口に相談
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う家庭内暴力の増加や深刻化は大きな問題です。
内閣府は、4月20日から従来の相談窓口に加えて「DV相談+」を開設しています。
【参考】内閣府:DV相談+
このDV相談+では、チャットや匿名での相談が可能です。
また、2020年4月29日からは電話相談も24時間受け付けるようになります。
外出自粛により支援団体へ駆け込めない、夫の在宅により電話での相談が困難といった方でも、安心して相談できるでしょう。
新型コロナウイルスに関して皆が苦労している今、被害を相談しにくい空気があるかもしれませんが、我慢していても事態は改善しません。
お一人で抱え込まず、こうしたサポートを利用して相談してみましょう。