養育費の強制執行|お金がとれない場合・デメリット・流れをわかりやすく解説
養育費の強制執行手続きの流れ、取り立てや差し押さえや申立方法、メリット・デメリット、差し押さえできる場合できない場合…[続きを読む]
離婚の際に養育費をとりきめたとしても、その後リストラに遭って無職になり生活ができない、借金を抱えて生活が苦しくなったりするケースもありますし、もしかするとわざと働かない人もいるでしょう。
養育費の支払いに関しての合意がある以上、金額が高くても払いたくなくても、養育費の支払いは法律上の義務です。
ただし、養育費の支払いがとても高すぎて払えない場合には、養育費の減額ができる方法・ケースもあります。
この記事では、
などについて、TwitterやYahoo!知恵袋などでも話題のテーマを法律的な視点から解説します。
また一方で、配偶者が養育費を未払いにしていて、早急に回収したい場合は、成功報酬制で、初回相談料が無料である弁護士に相談することをお勧めします。このような弁護士は、元配偶者と面会する必要もなく、連絡先が分からないメリットがあります。
目次
生活できないぐらい苦しい状況になり、その結果養育費を払わないとどうなるのか、払わない方法はないのか、払いたくない場合どのような事態が発生してしまうのかと気になるかと思います。ここでは基本について解説します。
養育費の支払いを取り決めた場合「支払義務者」は「親権者」に対して養育費の支払い義務を負います。
生活ができないので払いたくないといって、この義務に違反した場合、民法上の「債務不履行」(民法415条1項)に該当します。
生活が苦しくて、養育費を払えないで滞納していると、最終的には「強制執行」が行われ、財産を処分されてしまう可能性があります。
強制執行の定義は以下のとおりです。
つまり、強制執行が行われると、給与債権や銀行預金、家などの資産を差し押さえられ、強制的に養育費の弁済に充てられることになります。
強制執行される可能性があるのは、養育費の支払いについて記載された「債務名義」というものがある場合です。
「債務名義」はいくつかありますが、代表的なものは以下のとおりです。
そのため、相手が上記のような債務名義を取得していない場合は、強制執行は行われません。
しかし、今現在債務名義を取得しなくても、強制執行の前に訴訟等を行い、別途債務名義を元配偶者が手に入れることで、強制執行は可能になります。併せてご注意ください。
改正民事執行法においては「財産開示手続」上の義務違反が刑事罰の対象とされました。
具体的には、強制執行を行われる際に財産開示手続上の義務に債務者が違反した場合、6月以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます(民事執行法213条1項)。
したがって、法改正以降は、生活が苦しくて払いたくないと言って払わない場合、刑事罰という強力な制裁をバックに、債務者を財産開示手続に協力させられることになったわけです。
養育費のような金銭債務の債務不履行の場合、支払い期限から遅れた期間分について遅延損害金の支払い義務を負います。
遅延損害金は、原則として法定利率によりますが、法定利率を超える約定利率をあらかじめ合意していればそれに従います(民法419条1項)。
法定利率については、2020年4月1日施行の新民法により改正されたため、養育費の支払いを合意したタイミングによって適用される法定利率が異なります。
わずかな期間の支払いが払えないであれば、遅延損害金はそれほど大きな金額にはなりませんが、何年も養育費の支払いを滞納していると思いがけない金額に膨れ上がってしまう可能性があるので、注意が必要です。
養育費を完全に払わない方法とは少し違いますが、「一時的に」払わなくていい、免除が認められる方法は以下のとおりです。
養育費の支払義務者が仕事を辞めて無職になってうつ病になってしまった場合、生活できないぐらい苦しい状況になった場合、元夫婦間の経済状況のバランスを考慮すると、支払義務者側に養育費の支払いを強制する根拠に乏しい状況といえます。
無収入になった原因や無収入の期間なども考慮されることにはなります。
そして、やむを得ず長期間無収入となっているという事情があれば、養育費の支払いが免除され一時的には払わなくていい可能性はあります。
つまり、養育費を払わない方法とは「支払い能力ない状態」になるということです。そのため、わざと働かない人すらいるのです。
なお、養育費の支払義務者が無職であっても、生活保護を受給している場合は判断が難しいと言えます。
「生活保護費が収入」としてカウントされるかどうかについては争いがあるからです。
生活保護は本人の最低限の生活を保障するために必要な金額として支給されるものなので、養育費の算定上考慮すべきでないという見解もあるためです。
下記のようなシチュエーションを想像してください。
この場合、再婚相手が新たに親権者となりますが、養育費の支払義務者は親権者ではなく、子供に対する経済的な扶養義務を負っているにとどまります。
親権者である親と再婚相手が第一次的な扶養義務を負い、養育費の支払義務者は第二次的な扶養義務者ということになります。
親権者が再婚相手との家庭に子供を養育するために十分な経済力がある場合には、養育費の支払いを免れることができ、払わなくていい可能性があります。
親権者が再婚をしたとしても、再婚相手と子供が養子縁組を行わない場合には、再婚相手は子供の親権者とはなりません。
この場合には、養育費の支払義務者は依然として第一次的な扶養義務者ですので、養育費の免除は認められないのでご注意ください。
なお、養育費を払わなくていいケースとして、子供が親権者の扶養を脱したと認められる状況になるというパターンもあります。
ただし「親は子供が成人年齢(現在は20歳)に達するまで扶養義務を負う」ということがよく言われていますが、必ずしもそうとは限りません。
たとえば子供が「4年制大学」に通っている場合には、22歳程度まで親の扶養義務は存続すると考えることが合理的です。
また、子供が20歳に達していない場合であっても「結婚や就職などにより独立」した場合には、親の扶養義務は消滅すると考えられます。
ポイントは「成人年齢」はあくまでも一つの目安に過ぎないということです。
昨今、成人年齢引き下げも行われましたが、あくまで具体的な事情による総合判断という考え方には変わりがないものと考えられます。
上記のように養育費は払わない方法はほとんどないことがわかりますが、生活できないぐらい苦しい状況になり、その結果、養育費の全額は高すぎて払えないので「減額」を認めてもらうとする以下のようなケースもあります。
養育費の支払義務者の収入が減少した場合には、元夫婦間の経済状況のバランスが変化し、支払義務者側が支払うべきと考えられる養育費の金額は減少します。
したがって、支払義務者の収入が減少した場合には養育費の減額が認められる可能性があります。
親権者側の収入が増加した場合にも減額の可能性があります。
同じく元夫婦間の経済状況のバランスが変化し、支払義務者側が支払うべきと考えられる養育費の金額は減少します。
したがって、親権者の収入が増加した場合には養育費の減額が認められる可能性があります。
養育費の支払義務者が再婚をして、再婚相手との間に新たに子供をもうけた場合、養育費の支払義務者が扶養すべき子供の人数が増えることになります。
その場合、支払義務者の扶養能力が分散しますので、養育費の減額が認められる可能性があります。
養育費の減額手続きについては、後述致します。
養育費が払えないために行う免除や減額は、あくまでも元夫婦間の経済状況のバランスを客観的に比較することにより認められる可能性があるものです。
よって、上記の観点とは関係がない事情を理由に養育費の免除・減額を主張しても、認められることはありません。以下、養育費の免除・減額が認められない例について解説します。
借金など他の債務を作ったことが原因で養育費を支払えないとしても、それは支払義務者の個人的な事情に過ぎません。
大きく収入が減っているなどの事情がある場合には別ですが、そうではなく借金の金額が多く返済負担が重いというだけでは、養育費を減額する理由にはなりません。
なお、仮に支払義務者が自己破産をした場合であっても、養育費の支払義務は免責の対象外とされていることに注意が必要です。
面会交流が拒否されたことを理由として養育費の支払いを拒否するというケースがしばしば見受けられます。
面会交流をするかどうかは元夫婦間の経済状況とは全く関係がなく、また面会交流は養育費支払いの交換条件ではないのです。
面会交流を拒絶されている場合には、養育費の不払いで対抗するのではなく「面会交流調停」を申し立てるなどの方法をとるべきでしょう。
養育費の免除・減額を請求したい場合に、どのような手続きを取るべきかについて解説します。
法的な手続きを取る前に、直接の話し合いにより問題を解決できるのであればそれに越したことはありません。
交渉の材料として、収入が減ったなどの事情がある場合には「源泉徴収票などの証拠」を用意しておくと良いでしょう。
話し合いが成立した場合には、合意内容を書面の形で残しておきましょう。
口頭での約束で終わらせてしまうと、後々トラブルを招く可能性があるので注意が必要です。
もし話し合いで解決できない場合には、裁判所に養育費減額調停を申し立てましょう。
養育費減額調停では、調停委員が元夫婦の間に入って交渉を仲介してくれるので、直接の話し合いよりも解決・合意に繋がりやすいといえます。
その際、収入の減少や生活環境の変化などを証明する証拠を準備する必要があります。
養育費減額調停が成立しない場合には「審判手続」に移行します。
審判手続でも引き続き調停成立が目指されますが、不成立の場合には裁判官が審判を下し、養育費の適切な金額や支払い期間を示すことになります。
養育費減額の審判にも納得できない場合「即時抗告」という手続きを取ることができます(家事事件手続法156条4号)。
ご自分で行うのは難しいため、弁護士にご相談されることをおすすめします。
今回は、TwitterやYahoo!知恵袋などでも話題になりがちの養育費を払わないとどうなるか、支払い能力がない場合はどうなるか、生活できず高すぎて苦しい場合どうすればいいか、わざと働かない人がいること、無職になって借金がある場合なども解説しました。
通常は、遅延損害金が膨らんでしまい、また最悪の場合強制執行により財産が強制的に処分されてしまいます。
もし養育費の支払いが難しいという場合には、免除や減額が認められる可能性があるので、早めに弁護士に相談してください。
弁護士は、依頼者の具体的な事情をもとに、養育費の免除や減額が認められるかどうかを検討し、どの手続きを利用すべきかについてのアドバイスをしてくれます。
養育費の支払いに困ってしまった場合には、ぜひお気軽に弁護士にご相談ください。
また一方で、配偶者が養育費を未払いにしていて、早急に回収したい場合は、成功報酬制で、初回相談料が無料である弁護士に相談することをお勧めします。このような弁護士は、元配偶者と面会する必要もなく、連絡先が分からないメリットがあります。