自営業者の夫と離婚する際の注意点|財産分与や連帯保証はどうなる?

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rikonn zieigyou

自営業者の夫と離婚をしたい場合、会社員などとの離婚のケースと比べて、財産分与を中心に特有の注意点が存在します。

事業に関する資産の財産分与がどうなるか、妻が夫の事業を手伝っていた場合はどうかなど、離婚条件を交渉する際に知っておいた方がいいポイントがありますので、この機会に押さえておきましょう。

この記事では、自営業者の夫と離婚する際に、妻が気を付けなければならないポイントについて、詳しく解説します。

それぞれ項目別にしていますので、順番に全部読んでもいいですし、以下の目次から気になるポイントだけ読んでいただいても分かるようになっています。

事業用資産も財産分与の対象になるか?

夫が事業を行う中で築き上げた資産は、かなりの金額に及んでいるケースもあるでしょう。
その場合、事業用資産が財産分与の対象になるかどうかは、妻にとって重大な関心事になります。

個人事業主の場合は事業用資産も分与対象

夫が個人事業主の場合は、婚姻中に獲得したものであれば、事業用資産も財産分与の対象になります。

夫の名義で取得した財産であっても、婚姻中に獲得した分については、夫婦の協力の下、共同で築き上げた財産と評価されるためです(民法762条2項)。

なお、夫が婚姻前から有する財産については夫の特有財産であり、財産分与の対象とはなりません(同条1項)。

法人の財産は分与対象外|ただし株式は財産分与の対象

一方、夫が事業を法人化している場合には、法人の財産は財産分与の対象外となります。
これは、法律上は法人と経営者が別人格であるためであり、夫が実質1人で経営している法人の場合でも同様です。

なお、夫が保有している会社の株式については夫の財産であるため、財産分与の対象になります。

しかし、夫が会社を経営し続ける以上は、株式自体を財産分与することは渋られる可能性が高いでしょう。
その場合は、株式の代わりに金銭を多めに分与して解決が図られることも多いです。

財産分与は2分の1ずつ?自営業者との離婚の特殊性

夫婦が離婚をする際の財産分与では、共有財産を2分の1ずつに分けることが基本となります。

しかし、自営業者である夫と離婚する場合には、実際には妻の側が受け取れる金額が少なくなるケースもあります。

 経営手腕を重視して夫の取り分が多くなる傾向

自営業者が稼ぎ出す収入は、会社員がもらう給与などと比べて、自営業者自身の経営手腕によるところが大きいと評価される傾向にあります。

もちろん、妻の側にも一定の貢献は認められるわけですが、実際に経営を行った夫と同等の貢献度が認められるとは言いにくいケースも多いのが実情です。

そのため、財産分与の割合も6対4、7対3など、妻の側が少なくなってしまう事例も多く見られます。

事業に対して妻の貢献が大きい場合には2分の1に近づく

ただし、妻の側が事業に対して大きく貢献していたようなケースでは、財産分与の割合も2分の1に近づくか、あるいはそれ以上に認められる可能性もあります。

たとえば、

  • 妻が夫の事業を無償で手伝っていた場合
  • 妻が実質的に共同経営者として事業に関与していた場合
  • 妻の特殊技能が事業の発展に不可欠な役割を果たしていた場合

などには、妻への財産分与が多めに認められる可能性が高いでしょう。

妻が夫を無償で手伝っていた場合の取り扱い

夫が自営業者の場合、専業主婦である妻が、夫の事業を無償で手伝っているケースもよくあります。

しかし、これはあくまでも婚姻関係が続くことを前提としており、離婚をするのであれば、これまで手伝った分を精算してほしいと考える方もいらっしゃるでしょう。

この点、法律上の取り扱いはどうなっているのでしょうか。

無償で手伝っていた期間分の給与支払いは認められない

妻が無償で夫の事業を手伝っていた期間について、遡って給与を支払えという請求は認められない可能性が高いでしょう。

婚姻関係にある夫婦間での手伝いについては、報酬を無償とすることに妻が同意している限り、夫は妻に対して報酬を支払う義務を負いません

仮に後から婚姻関係を解消することになったとしても、手伝いが行われていた当時の合意内容を塗り替えることにはなりませんので、遡っての給与支払いは認められないのです。

財産分与において妻の貢献が考慮される

ただし、妻が無償で夫の事業を手伝っていた場合、その頻度や時間数にもよりますが、妻が夫の事業に対してある程度直接的に貢献していたと評価できます。

そのため、妻への財産分与が多く認められる可能性が高まるでしょう。

夫が妻を雇用していた場合、離婚により解雇されるか?

夫が個人事業主として、または法人として、妻を従業員として雇っていた場合には、離婚を原因とした解雇は認められるのでしょうか。

離婚のみを理由とした解雇は違法の疑いあり

結論としては、離婚のみを理由とした解雇は違法の疑いがあります。

労働契約法16条では、客観的に合理的な理由がなく、社会的相当性を欠く解雇は無効である旨が規定されています(解雇権濫用の法理)。
このルールは、労働者の立場が使用者に比べて弱いので、労働者の生活を保障するために保護を図ることを目的としています。

夫と妻という関係性であっても、雇用契約である以上は、解雇権濫用の法理が適用されます。ましてやこれから離婚をする場合はなおさら、労働者としての妻の権利を保護すべき場面であるといえるでしょう。

離婚を機に妻が全く仕事を手伝わなくなったなどの事情があれば別ですが、働きぶりに問題がない場合は、離婚の事実のみをもって妻を解雇することは認められにくいと考えられます。

 解決金を支払って退職してもらうケースが多い

しかし実際上は、妻が離婚後も従業員として夫の事業を手伝い続けることは現実的ではないでしょう。

そのため、夫が妻に対して解決金を支払ったり、解決金相当額を財産分与に上乗せしたりすることを条件として、妻に退職してもらうケースが多いです。

妻が法人の役員(社員)になっていた場合、離婚により解任される?

夫が事業を法人化しているケースでは、所得分散などを目的として、妻を法人の役員(社員)にしている場合があります。
この場合、離婚をきっかけとして、妻は法人の役員(社員)を辞めなければならないのでしょうか。

この点については、株式会社か合同会社かによって変わってくるので、それぞれのケースに分けて解説します。

株式会社で夫が過半数株主なら解任される可能性が高い

株式会社の役員(取締役)は、株主総会の普通決議(過半数の賛成)により解任することができます(会社法339条1項、309条1項)。

夫がメインで経営する株式会社の場合、夫が株式を全部、または少なくとも過半数保有しているケースがほとんどでしょう。この場合、夫1人が株主総会で妻の解任に賛成すれば、自動的に妻は取締役から解任されてしまいます。

夫としても、離婚後も妻と会社を経営していく気はないことが多いでしょうから、妻としては解任を覚悟しなければなりません。

なお、役員を退任する際には、委任契約や会社の退職金規程の内容に従って、所定の退職金を受け取ることが可能です。

妻が合同会社の社員の場合、退社は任意

一方、妻が合同会社の社員の場合には、離婚を機に退社するかどうかは、妻が任意に選択できます。たとえ夫の出資持分が大半を占めていたとしても、夫単独の判断で妻を退社させることはできません。

この場合、やはり夫から妻に一定の解決金を上乗せして社員持分を買い取るという、金銭的解決が図られる場合が多いです。

事業上の債務について妻が連帯保証している場合はどうなる?

夫が事業に関して負担した債務について、妻が連帯保証人になっている場合、離婚後も連帯保証人であり続ける筋合いはないと考える方も多いでしょう。

法律上、離婚した場合に連帯保証は解除してもらえるのでしょうか。

連帯保証から解放されるには債権者の同意が必要

結論としては、連帯保証が離婚をきっかけとして自動的に解除されることはありません。

連帯保証は、債権者と連帯保証人の間の連帯保証契約に基づいて、債権者のために設定されるものです。そのため、連帯保証を解除してもらうためには、債権者の同意が必要となります。

連帯保証人が主債務者の夫と離婚したからといって、債権者が連帯保証の解除を認めてくれることは通常ありません。したがって、妻は離婚後も、夫の事業に関する債務の連帯保証人であり続けることになります。

財産分与の増額で対応するのが現実的

債権者との関係で連帯保証を解除してもらえる可能性は低いですが、夫と妻の間では、妻が連帯保証人であり続けることの負担を補填してもらうことは可能です。

現実的には、財産分与の金額をある程度増額するなど、交渉のうえで金銭的解決を図ることになるでしょう。

国民年金は年金分割の対象外であることに注意

夫婦が離婚をする際、合意しておくべき離婚条件としてよく問題になるのが「年金分割」です。

しかし、夫が個人事業主の場合には、加入している年金が国民年金であるため、年金分割の対象にはならないことに注意しましょう。

年金分割とは、婚姻期間中に厚生年金保険料を支払うことによって得た「厚生年金の2階部分を受け取る権利」を、夫婦の間で財産分与することをいいます。この点、国民年金には2階部分がありませんので、夫が加入している年金が国民年金の場合は、年金分割は問題にならないのです。

ただし、夫が事業を法人化していて、法人から役員報酬を受け取っている場合は、厚生年金保険への加入が義務付けられています。
この場合には年金分割の対象になるので、夫に対して年金分割を忘れずに請求しましょう。

まとめ

自営業者の夫と離婚をする際には、財産分与などに関して考えなければならないことがたくさんあります。

妻の側に有利になる事情を漏れなく拾い上げ、より多くの財産分与を受け取るためには、弁護士に相談することをお勧めいたします。

弁護士は、ご家庭の財産状況や、依頼者である妻が事業にどのように関与していたかなど、具体的な事情を詳細に検討して、依頼者が納得できる水準の財産分与が受けられるようにサポートします。

自営業者の夫との離婚を検討している方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

 
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