養育費減額調停とは|申立て~終了の流れと弁護士に依頼するメリット
養育費が払えない…と悩んでいる人へ。養育費の金額を減らせる可能性があります。この記事では、養育費減額のための養育費減…[続きを読む]
子どもがいる夫婦が離婚した場合、非親権者の側は、子どもが自立するまでの間、養育費の支払いが続くことになります。
養育費は、子どものために必要なお金ですので、基本的には、離婚時に決めた養育費の金額を支払っていかなければなりません。
しかし、再婚などをして生活状況に変化があった場合には、当初決めた養育費の金額を支払っていくのが難しいこともあるかもしれません。
実は、そのようなケースにおいて養育費の減額が可能な場合があります。
今回は、再婚を理由に養育費を減額できるかどうか、減額するためにはどのような手続きをとればよいかについて解説します。
養育費とは、子どもが社会人として自立して生活することができるようになるまでに必要となる費用のことをいいます。
そのため、子どもが高校卒業後に就職をしたような場合には、未成年者ではありますが、自立して生活をしていることから養育費を支払う必要はありません。他方、大学に進学をした場合には、20歳を超えていますが、養育費の支払いが必要になる場合もあります。
養育費には、子どもの衣食住のために必要となる費用や医療費、教育費などが含まれます。
なお、離婚前の婚姻費用には配偶者の生活費も含まれていますが、離婚後の養育費はあくまでも子どものための費用ですので、元夫や元妻といった親権者の生活費は含まれていません。
では、離婚後に再婚をしたら、養育費を減額することができるのでしょうか。
以下では、養育費を受け取る側である親権者(権利者)が再婚した場合と、養育費を支払う側である非親権者(義務者)が再婚した場合とで分けてご説明します。
離婚の際に養育費の金額を合意していたとしても、合意がなされた当時予測できなかった事情の変更が生じたときは、養育費の金額変更が認められています(民法880条)。
この養育費の変更は、双方の協議でもできますし、家庭裁判所の調停・審判によってされることもあります。
親権者が再婚をした場合に、事情変更として養育費の減額認められるか否かは、再婚相手と子どもが養子縁組をしているかどうかによって変わってきます。
再婚相手と子どもが養子縁組しない場合、法律上、再婚相手には、子どもを扶養する義務がありません。
親権者が再婚をしたとしても、養子縁組をしていなければ、再婚相手には子どもを扶養する義務はないため、再婚相手には子どもの養育費の支払い義務はなく、引き続き非親権者が子どもを扶養していかなければなりません。
再婚によって事実上再婚相手の収入によって子どもを養っているという事情はあるかもしれませんが、あくまでも法律上の扶養義務者は非親権者ですので、親権者の再婚によっても養育費の減額をすることはできません。
もっとも、親権者と非親権者とが話し合いによって養育費を減額することは可能です。
親権者が再婚相手の収入で十分に生活できている状況であれば、親権者も減額に応じてくれる可能性もあるので、まずは話し合いをしてみるとよいでしょう。
再婚相手と子どもが養子縁組をしている場合、再婚相手と非親権者のどちらも子どもに対する扶養義務が生じることになります(民法818条2項)。
そして、再婚相手の扶養義務は、非親権者の扶養義務に優先するとされていますので、再婚相手が、子どもに対して第1次的に扶養義務を負うことになります。
したがって、再婚相手と子どもが養子縁組をしているケースでは、非親権者は、親権者に対して養育費の減額を求めることが可能になります。
さらに、再婚相手の収入が十分であるときは、非親権者の養育費の支払いは免除されることもあります。
非親権者が再婚をした場合にも、再婚をしたということだけで養育費の減額が認められるわけではありません。
とはいえ、非親権者が再婚をした場合には、再婚相手を扶養する義務が生じます。
また、再婚相手に子どもがいた場合に、その子どもと養子縁組をした場合には、その子どもに対しても扶養義務が生じます。さらに、再婚相手との間に子どもが生まれれば、その子どもに対しても扶養義務が生じることになります。
そのため、以下のような事情がある場合には、養育費の減額ができる場合があります。
養育費の減額が認められる可能性があるとしても、どのように減額をしたらよいのでしょうか。
以下では、具体的な養育費の減額の手続きについて説明します。
養育費の減額をする場合、まずは、当事者同士話し合いをして決めることになります。
非親権者が再婚した場合、扶養する家族が増えたため当初の養育費の金額では経済的に厳しいということを正直に伝えることが大事です。
離婚の理由によっては、感情的になってしまうこともあるかもしれませんが、冷静に話し合うようにしましょう。
また、親権者が再婚したことを知った場合、家庭状況や収入等も話し合いつつ、「養育費を減らしても問題ないのではないか」ということを相談しましょう。
話し合いで養育費の減額について合意できた場合には、減額後の養育費の金額や減額後の養育費の始期と終期などの合意内容を必ず書面で残しておくようにしてください。
そして、書面にする場合には、公正証書にしておくとよいでしょう。
公正証書にすることで、親権者の側は、裁判の手続きを経ることなく強制執行をすることができるというメリットがあります。
そのため、非親権者の側で公正証書を提案することによって、親権者の側が減額に応じてくれる可能性が高くなります。非親権者としても、減額したことは明確に証拠として保存でき、安心です。
なお、当初の養育費の合意が、調停調書でなされていたとしても、必ずしも再度調停をしなければならないわけではなく、お互いの合意で決めることができます。
当事者の話し合いによって養育費の減額ができなかった場合には、家庭裁判所に養育費減額調停を申し立てることになります。
調停では、男女二人の調停委員が、当事者の間に入って話を聞いてくれますので、直接顔を合わせる心配はありません。
当事者同士の話し合いでは、お互い感情的になってしまい話し合いが進まないというケースでは、お互い顔を合わせることのない調停は有効な手段となります。
調停が成立した場合には、合意した内容が調停調書に記載されます。
調停が不成立となった場合には、自動的に審判手続きに移行します。審判手続きでは、当事者の主張や収支状況などの証拠を踏まえて、裁判官が養育費の減額を認めるかどうか、認める場合は金額をいくらとするのかを決めることになります。
なお、養育費減額調停の手続きについては、以下の記事で詳しく解説しています。
なお、養育費の金額については、以下のツールで、算定表と同様の計算式でご自身のケースに応じた養育費の目安を簡単に試算できます。ぜひご活用ください。
再婚をしただけでは、養育費の減額をすることはできませんが、再婚によって扶養家族に変化があった場合には、事情変更があったものとして、養育費の減額ができる場合があります。
再婚によってどのくらい養育費を減額できるかどうかは、当事者双方の家庭状況や経済状況によって異なってきますので、正確な金額を知りたいときには、専門家である弁護士に相談してみるとよいでしょう。