家庭裁判所の調停・審判の流れと申し立て|家事事件手続法を元に解説

家庭裁判所とは、家庭内の紛争や非行を犯した少年の事件を専門的に取り扱う機関です。

家庭裁判所では、家庭内の紛争である「家事事件」の審判・調停と、非行を犯した少年の事件である「少年事件」の調査・審判を行っています。

このうち、本記事では家庭裁判所が取り扱う「家事事件」がどのようなものであるか、調停から審判への流れや、家事事件手続法についてわかりやすく、離婚を例としてご説明します。

家庭裁判所が取り扱う家事事件って?どのようなものが含まれるの?

家事事件とは|民事事件と何が違うの?

「家事事件」とは、主に家族関係や婚姻に関する法的な問題を指します。具体的には、離婚、親子関係の確認、養育費や財産分与などが家事事件に含まれます。これらの事件は、家庭内の問題や家族間の紛争に関連して発生するもので、家庭裁判所などで扱われます。家事事件の特徴は、家族の個人的な事情や感情が強く影響を与えることが多いことです。

他方、「民事事件」とは、個人や法人などの間で発生する法的な紛争全般を指します。これには、契約違反、損害賠償請求、不動産取引の紛争、債務整理、借金問題、交通事故などが含まれます。民事事件は、一般的に裁判所で審理され、関係者の法的権利や責任に関する判断が下されることが目的です。家事事件とは異なり、感情的な要素よりも契約や法的義務などが中心になることが多いです。

要するに、家事事件は主に家族関係に関する問題を、民事事件は個人や法人の間の一般的な法的紛争を指します。

家事事件の内訳|調停事件と審判事件

「家事事件」には、大きく分けると「調停事件」と「審判事件」があります。

「調停事件」は仲介による話し合いです。裁判官と二人以上の調停委員によって調停委員会を構成し、調停委員が当事者に助言を行なったりあっせんを図ったりすることで、双方の合意による解決を目指すものをいいます。当事者間で合意が成立すると、合意事項を調停調書という書面にして調停は終了します。

「審判事件」は裁判官が判断するものです。家庭裁判所の調査官が調査で知った事実や、紛争中の当事者が提出した書類などを元にして裁判官が審判を下すものをいいます。
調停事件と審判事件の違いは、最終的な決定権が当事者にあるか裁判官にあるかという点にあります。

家事事件を申し立てた!行われる調停の種類って?

家事事件手続法にて調停3種類

訴訟を提起する場合はまず家事調停を経なければならないとする調停前置主義(家事事件手続法257条)により、調停ができる家事事件を申し立てる場合には、原則としてまず調停を行う必要があります。

そして、この調停には、別表第二調停、特殊調停、一般調停の3種類があります。

別表第二調停

別表第二調停とは、家事事件手続法の別表第二に掲げる事項に関する調停をいいます。

別表第二に掲げられる事項の例としては、親権者の変更、養育費の請求、婚姻費用の分担、遺産分割などがあげられます。
これらの事件は、その性質上第一次的には当事者の話し合いによる自主的な解決が期待されるため、主に調停によって扱われます。

話し合いがつかずに調停が成立しなかった場合、自動的に審判手続に移ることになります。

なお、当初から審判として申し立てられた事案であっても、裁判所の判断で調停による解決が試みられることもあります。
これを「調停前置主義」といいます(家事事件手続法257条1項、2項)。

特殊調停

特殊調停の対象となる事件には、協議離婚の無効確認、親子関係の不存在確認、嫡出否認、認知などがあげられます。

これらの事項は、身分関係に関わる内容であり、個人の意思や当事者の合意だけでは処分が許されない性質を有しているため、本来は人事訴訟というもので解決すべき事項とされています(人事訴訟については「5-1.人事訴訟とは?」でご説明します)。

しかし、例外的に、以下の2点を満たしている場合には、家庭裁判所が必要な事実の調査をして、合意を正当と認めるときに「合意に相当する審判」が行われます(家事事件手続法277条1項)。

  • 当事者間で審判を受けることについて合意があり
  • 申立ての原因となる事実関係について当事者間に争いがない

つまり特殊調停は、調停自体の手続きや流れは他の調停と同様ですが、その後の審判の流れが異なるため特殊調停として他の調停とは異なる取り扱いがなされています。

一般調停

家事調停のうち、上記別表第二調停と特殊調停の対象となる事件を除いた事件が一般調停の対象となります。

いわゆる離婚調停は「一般調停」に分類されます。夫婦関係調整(円満)も一般調停の対象です。

なお、離婚調停では、親権者の指定、面会交流、養育費、財産分与、年金分割、慰謝料の請求などを合わせて申し立てることができ、これらの申立てを附随申立てといいます。

審判事件の種類その①|調停を経ずに行われる審判

家事事件手続法の別表第一に掲げられている事項については、調停を経ずに審判が行われます。これを別表第一事件といいます。

子の氏の変更許可、相続放棄、名の変更の許可、後見人の選任、養子縁組の許可などがあげられます。

これらの事項は、当事者同士の主張がぶつかり合うような性質ではなく、家庭裁判所が国家の後見的な立場から関与する必要があります。

そのため、当事者間の合意による解決ではなく、審判のみによって扱われます。

審判事件の種類その②|調停不成立後に行われる審判

別表第二調停が不成立になった場合

別表第二事件は、第一次的には当事者間の話し合いによる自主的な解決が期待されているため、流れとして、通常は調停から始まります。

しかし、大部分では当事者間で合意が得られているものの、些細な部分で意見が食い違って話がまとまらない場合や、当事者が相手と合意するという体裁をとりたくない場合など、本来ならまとまるはずの調停が成立しないケースがあります。
こうしたケースでは、調停に代わる審判がなされることがあります

大筋では合意できているのに不成立としてしまうと、その後改めて訴訟や審判によって解決しなければならないため、当事者にとっては負担が大きくなってしまいますし、それまでの調停での話し合いが無駄になってしまいます。

そこで、家庭裁判所が当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を考慮して、相当と認めるときには、職権で調停に代わる審判をすることができるとされています(家事事件手続法284条)。

調停に代わる審判は、調停不成立後に自動的に移行する審判とは別の手続です。
そして、調停に代わる審判に異議が申し立てられた場合には、自動的に審判手続に移行することになります(家事事件手続法286条7項)。

特殊調停が不成立になった場合

特殊調停が不成立の場合、自動的に審判には移行しないため、紛争の最終的な解決のためには、家庭裁判所に人事訴訟を提起する必要があります。

なお、前述の通り、一定の場合には家庭裁判所が必要な事実の調査をして、合意を正当と認めるときに「合意に相当する審判」が行われます。

一般調停が不成立になった場合

一般調停の場合には、調停が不成立となっても通常は審判に移行することはないので、離婚であれば離婚訴訟を提起して争うか、再度協議離婚を試みる必要があります。

ただし、一般調停が不成立の場合にも、調停に代わる審判がなされることがあり、調停に代わる審判による離婚を審判離婚といいます(次の4-4でご説明します)。

なお、一般調停である離婚調停に附随申立てとして養育費の請求などを申立てていても、附随申立ては離婚が成立することを前提とするものであるため、附随申立てのみが審判に移行することはありません。

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審判離婚はどのような手続になるの?

離婚は一般調停事件(人事訴訟法2条参照)なので、調停が不成立の場合には通常は離婚訴訟を提起するか、再度離婚協議を試みることになります。

しかし、家庭裁判所が当事者双方の事情を考慮し、審判によって一定の解決を示すことが相当であると判断した場合には、調停に代わる審判がされることもあります(家事事件手続法284条)。

調停に代わる審判がなされるケースの例としては、例えば次のようなものがあります。

  • 離婚をすること自体には争いがないものの、財産分与や子の親権についてわずかに意見が対立している場合
  • 話し合いの結果離婚を認めた方がいいケースであるものの、夫婦の一方が相手と合意するという体裁をとりたくないとして合意できない場合

調停に代わる審判がなされた後、2週間以内に当事者から異議が申し立てられなかった場合には、その審判は確定判決と同一の効力を有することになります。
他方、異議が申し立てられた場合には、その審判の効力は失われます。この場合には、離婚訴訟を提起するか、再度離婚協議を試みる必要があります。

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家事調停でも離婚が成立しなかった!|人事訴訟を行う

人事訴訟とは?

家庭裁判所での離婚調停などが成立しなかった場合、流れとして最終的には離婚訴訟しかありません。

この離婚訴訟を含めて、夫婦や親子の関係についての訴訟を「人事訴訟」といいます。

人事訴訟の例としては、離婚や認知、離婚後の親権者の決定、財産分与、子供の養育費などがあげられます。
人事訴訟は民事訴訟の一種であるため、基本的には民事訴訟の審理手続と同じ手続をとります。

ただし、家庭裁判所における人事訴訟においては、以下のような点が民事訴訟とは異なります。

  • 家庭裁判所に選任された参与員が証拠調べや和解を試みる際に立ち会うことがある
  • 家庭裁判所の調査官が子供の親権者指定のために子供に面接をし、調査を行うことがある

離婚訴訟で行われる附帯処分

離婚訴訟では、離婚を認めるか否かの判断に加えて、離婚に伴う条件について定めることも合わせて申し立てることができます。
この離婚に伴う条件を定めることを附帯処分といいます。

附帯処分は、離婚訴訟と資料が共通する場合も多く、また離婚と密接に関わる問題であるため、離婚訴訟においてまとめて解決することを目的としています。

附帯処分には、養育費の分担や子の監護者の指定、財産分与、年金分割などがあります。
離婚調停での附随申し立てと同じようなものだと考えておきましょう。

なお、親権者の指定については当事者の申立てがなくとも裁判所が離婚訴訟において職権で判断しなければならないため、厳密には附帯処分とは違いますが、実務上は附帯処分と同様の扱いがなされています。
通常これら附帯処分については当事者自らの申立てが必要となりますが、親権者の指定については子供が未成年である場合に限って、裁判所の職権で申立てが促される場合があります。

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執筆・監修
服部 貞昭
ファイナンシャル・プランナー(CFP・日本FP協会認定)
2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)
東京大学大学院 電子工学専攻修士課程修了
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