外国人が離婚をすると、在留資格や永住権が取り消しされて強制退去になるか?
フィリピン人やアメリカ人などとの国際離婚で知っておくべき法律を解説します。在留資格から、離婚後の親権、ハーフの子ども…[続きを読む]
国際結婚は、異なる2つの国の法律の下で成立する結婚契約です。このため、離婚を考える場合も、2つの国の法律に従った手続きが必要です。
特に、フィリピン人と日本人のカップルが離婚を検討する場合には、懸念事項が生じることがあります。しかし、2つの国の法律を遵守し、双方が承認する手続きを経ることで、離婚が正式に成立することになります。
では、日本人とフィリピン人が結婚し、その後、離婚を希望する場合、どのような手続きが必要なのか、そして離婚は可能なのかを詳しく説明します。また、なぜ親権や慰謝料の問題については弁護士に相談すべきかについても解説します。
目次
かつてはフィルピンパブでの出会いなどでフィリピン人の方との結婚が増え、国際結婚急増の時期がありました。最近でもフィリピン人の技能実習生・研修生と結婚する方もいるようです。
しかし、2015年の統計によると、国際結婚の約7割が離婚していると言われています。国際結婚自体が少ない上に、離婚は多いというのが現状なのです。
そして特にフィリピン人との結婚で気をつけることとして、よく挙げられるのが
など様々があります。
ただ、フィリピン人と夫婦問題が起きた時の最大のリスクが「離婚できない問題」なのではないかと不安に感じている人が多いようです。
フィリピンで離婚手続きを取ろうと思っても、そもそもフィリピンの法律に「離婚」という制度そのものが存在していません。
なぜ制度がないかというと、フィリピンの宗教的な文化が起因しています。
フィリピンは、東南アジアの中ではキリスト教の信仰が広い国であり、国民の大半がキリスト教徒となっています。
そして、キリスト教では互いが互いに仕え合い、たとえ問題があってもお互いに理解しあい試練を乗り越えていくことが当然であるという認識となっており、それを元にして法律も作られています。
日本人とフィリピン人が離婚をする場合であっても、日本人同士の離婚の手続きと同じように日本での離婚届の提出が必要です。
離婚の届出書を作成したら、届出をする人の日本国内の本籍地あるいは所在地にある市区町村の役所に提出します。
協議離婚をしようとする夫婦の離婚届には成人した証人2名の押印と署名の記載も必要です。
このように、手続き自体は日本人同士の離婚と全く変わりません。
しかし、日本人とフィリピン人との離婚の場合には、フィリピン人側の立場が離婚後に在留資格などの点で大きく異なってしまうという違いがあります。
在留資格やビザのことは国際離婚を考える上で、非常に重要なポイントです。詳しくは「外国人が離婚をすると、在留資格や永住権が取り消しされて強制退去になるか?」の記事も必ずあわせてご参照頂ければと思います。
フィリピン人が結婚をしたことにより日本に住んでいたならば、離婚をすることでフィリピン人は在留資格を失ってしまう場合があります。
国際結婚では外国籍を持つ人の国で、その国の法律のもと、別途手続きを行わなければいけないことが一般的です。
ただし、法律に離婚の制度そのものがないフィリピンでは、書類を提出したり、何かを申請したりといった手続きをする必要は特にありません。
そのため離婚方法といっても、上記で記載したとおり、揉めていなければ離婚届を出せばOKなのです。
とはいえ、フィリピンでも、2009年3月以前は日本国内の離婚手続きとは別に、フィリピン国内での離婚を成立させるための手続きが求められていました。「離婚報告」(Report of Divorce)という手続きです。
離婚報告という手続きでは、正式な離婚成立のためには、離婚した事実をフィリピン領事館に報告しなければいけませんでした。
フィリピン領事館に報告手続きを行うことで、外務省やNSO(フィリピン国家統計局本部)といったフィリピン国内の必要各所へ離婚した事実が連絡され、離婚の承認を受けていたのです。
しかし、フィリピンの制度が変更されてからは、フィリピンの公的機関に手続きをしなければいけない義務は全くなくなっています。
日本人とフィリピン人との離婚では、日本国内の離婚手続き以外に必要となる手続きはありません。
ただし、フィリピン人が「離婚後、再婚をする場合」には事前に手続きを行っておくことが必須となります。
実はフィリピンの法律では離婚の手続きをすることが求められていないだけで、手続きをしなくても離婚が成立しているというわけではないのです。日本で実際に離婚手続きを完了させてはいても、フィリピンではまだ婚姻関係が続いているという扱いとなっています。
このため、フィリピン人が再婚する場合には、継続している婚姻関係を終了させ、独身の証明となる婚姻要件具備証明書を取得することが必要です。
婚姻要件具備証明書を受けることができるフィリピン人は、初婚の人、死別した人、婚姻解除を受けた人、外国法の離婚についてフィリピンで承認を受けた人と定められています。
外国法の離婚についてフィリピンで承認を受けるためには、離婚したフィリピン人が一度フィリピンに帰国し、フィリピンの裁判所で外国法の離婚が正当であると認められなければいけません。
離婚したフィリピン人が再婚する場合には独身であることを証明する婚姻要件具備証明書を受けるために、フィリピン国内の裁判所で別途、手続きが必要となります。
しかし、この手続きはフィリピン人の再婚時にだけ必要な手続きとなっているわけではありません。
日本人が別のフィリピン人と再婚したいという場合にも、必要となる手続きです。離婚した前妻がフィリピンで離婚の承認を受けていないと、日本人との婚姻関係が続いているため、新たに婚姻関係を結びたいというフィリピン人との結婚が重婚となってしまいます。
このため、日本人とフィリピン人双方の今後の新たな生活を考慮した場合には、婚姻要件具備証明書を受ける手続きをあらかじめ行っておくことが安心となるケースもあります。
今回はフィリピン人との結婚で気をつけること、リスクと考えられがちな「離婚できない問題」と手続き、再婚などについて解説しました。
フィリピン人と離婚問題が発生した場合、原則として弁護士に相談することは賢明な選択です。弁護士は法律に詳しい専門家であり、あなたの権利や法的保護を理解し、適切な法的手段を提案してくれるでしょう。
フィリピン人との離婚は、離婚できないという点ばかりに焦点があたりがちですし、実際の手続きは簡単です。
しかし、フィリピン人と揉めてしまうケースの場合は、上記のように、簡単な手続きにはなりません。
慰謝料の問題、親権の問題などが複雑に絡むはずで、スムーズに離婚できないケースがあります。
その場合は、費用を捻出しても「国際離婚に強い弁護士」に相談すべきでしょう。