親権者の変更と移動|または親権を剥奪するためには

離婚の際に、親権者を誰にするか決めますが、その後、もう一度、親権者を変更するケース、極端な場合は剥奪するケースがあります。
父親から母親、また母親から父親に親権を変更するなどさまざまな事例が考えられます。
今回は、親権の変更についてと、親権を変更するためにはどのような手続きがいるのか、親権を取り戻す、取り返すにはどうすればいいのか、母親から親権が奪われやすいケースなど確認してみましょう。
目次
親権者変更で取り返される・母親から親権が奪われやすいケース
①育児放棄の場合
- 「親権者になってみたが、やっぱり子どもいらなかった」
といったふうに心が不安定になり「育児放棄」をしてしまう方がいます。
離婚後に子どもを引き取った親権者が、夜の仕事や遊びなどで外出の頻度が高いために幼い子どもを家に放置した場合、子どもは家に1人で居ることになります。
幼い子どもの場合、自分で食事やお風呂などの準備をすることはできず、排泄さえも1人ではままならないこともあります。このように子どもの身の回りの世話を親がしない育児放棄の場合は、親権変更して取り返すことができる可能性があります。
しかし親権剥奪が成立するまでは時間がかかることも多いので、子どもの心身のケアをするために児童相談所などに通告することが先決です。
②子どもいらないと、親が虐待する場合
親権者による子どもへの虐待が発生するケースがあります。
特に、経済的な理由などで育児が重荷となり、その精神的な負担が子どもへの暴力となってあらわれるケースがあります。
その場合、子どもの成長に悪影響を与えると判断され、子どもの親族にあたる者が家庭裁判所に親権者変更の調停の申し出を行い、話し合いが成立すれば親権者の変更が可能になります。
③子どもが親権者でない親との生活を希望する場合|15歳以上
意外と見落とされがちなことは「子供の意志」です。
親権変更は、子ども自身が希望して主張することもできます。物心ついていない幼い子どもの場合は、不遇な環境に置かれても自分自身で改善することができない、あるいは親権変更に関する知識がないために自分で親権変更を訴えることができないことがほとんどです。
しかし、子どもがある程度成長して自身の考えが主張できるようになると、「どうしても父親(あるいは母親)と一緒に住みたい」と主張することがあります。
この場合、子どもが15歳以上であれば、自身で家庭裁判所に行き申し出をすることができます。また15歳未満であっても主張が考慮されるケースもあります。
④その他の親権変更のケース
その他のケースとして、下記のようなケースの場合、親権の移動が許可されることもあります。
- 親権者が病気を患い入院や日常生活を送るのが困難になった場合
- 親権者が仕事などの都合で海外に滞在することになった際、海外で育児をするのが難しいと判断された場合
- 親権者が行方不明になるケース
- 親権者が子どもに強制労働をさせているケース
親権者を変更するには裁判所へ申立てが必要
離婚後の親権変更は,当事者同士だけで行えるものではありません。仲介人として家庭裁判所に申し出をして、法律に沿って調停を成立させ親権変更を許可してもらうことが必要になります。
親権者変更調停の申し立てに必要な情報
まず家庭裁判所に申し出をするには「親権者変更調停」事件として申し立てを行います。
申し立てでは、以下を提示する必要があります。
- 申立人が親権変更を希望する動機や事情
- 現在の親権者の考え
- これまでの養育環境
- 親権者と申立人それぞれの現在の経済状況
また子どもの性別、年齢などの個人情報や、今までどのような生活環境で過ごしてきたかを子どもから聞き出し、必要に応じて資料提出などを行う必要があります。子どもの人権、考えを尊重しつつ親権者と申立人の間で話し合いが進められます。
必要書類としては提出するものは申立書が3通、添付書類を含んだ事情説明書、戸籍謄本です。戸籍謄本は申立人、相手方、子どもの戸籍謄本を揃えなくてはいけません。
また収入印紙、郵便切手も用意する必要があります。収入印紙は子ども1人につき1200円、郵便切手は申し立てする家庭裁判所によって異なります。
また、仮に裁判所を通さずにお互いが親権変更を合意しても、公式に親権変更を成立させるためには家庭裁判所へ申し立てをする必要がある点は覚えておきましょう。
親権者変更の審判
話し合いが成立せず調停不成立になった場合は「審判手続き」が開始され、裁判官が事情を配慮して審判が行われます。
まとめ
今回は、親権者変更について解説致しました。
親権者変更調停は当事者だけで解決が難しい場合もあります。詳しくは親権者変更に強い弁護士に依頼すべきでしょう。