離婚と別居の違い|どちらが得か損か、メリット・デメリットを徹底解説
もう夫と一緒に暮らすのは限界。
- 離婚しようか、いや、いきなり離婚する前に別居したほうがいいかな?
- そもそも、離婚と別居、何がどう違って、どっちがお得なの?
こんな悩みを抱えている女性も少なくないのではないでしょうか。
そこで、本稿では、離婚と別居の違いや、どちらが得か、それぞれのメリット、デメリットなどについてお伝えします。
目次
離婚と別居の異なる点
未成年の子供に対する親権
婚姻中は、たとえ別居していても、夫婦間の未成年の子供に対する親権は、両親である夫と妻双方に認められ、共同でこれを行使することになります。
しかし、現在の日本では、離婚をすると父母いずれか一方の単独親権となります。
一般的に、離婚後、子供は親権を持つ親と同居することになるので、親権を持たない親は、子供とはなれることになります。
婚姻費用か養育費か
別居していても婚姻関係が継続している以上、夫婦は他方に対して扶養義務を負うことになります。また、当然のことながら、親は未成年の子供に対しても扶養の義務を負っています。
したがって、別居中、収入が相手方より少ない配偶者は、相手方から、自分と子どもに対する扶養義務の履行の意味を持つ婚姻費用を支払ってもらうことができます。
ところが、離婚すると、夫婦の他方に対する扶養義務はなくなり、子供に対する扶養義務だけが残ります。そのため、離婚後にもらえるのは養育費となります。
婚姻費用と養育費の金額は、一般的に、裁判所が用いている算定表に従って計算されますが、婚姻費用の方が高額になります。
公的扶助の支給を受けられるか
中学を卒業していない子供がいるなか、別居中でも児童手当の支給を受けることは可能です(支給を受けるためには、離婚調停が係属していることなどの証明が必要とされることが多いです)。
しかし、ひとり親家庭に支給される児童扶養手当は、離婚しないと支給されませんし、公営住宅への優先的入居も、離婚してひとり親でないと認められません。
別居のメリット・デメリット
別居のメリット|どちらが得か
別居のメリットはもちろんありますが、どちらが得かどうかは一概には言えません。
婚姻費用を受け取ることができる
先ほどもお話ししたとおり、別居中でも婚姻関係が係属している以上、夫婦はお互いに扶養義務を負うことになるので、収入が多い配偶者から、養育費よりも高額な婚姻費用を受け取ることが可能です。
ただ、別居の原因を、婚姻費用を受け取る側が作ったような場合には(例:不倫、暴力)、婚姻費用が減額されることもあるので、その点は注意が必要です。
離婚しやすくなる場合がある
相手方が離婚に応じてくれない場合、一定の理由があるケースでは、裁判で強制的に離婚が認められることがあります。具体的には、不倫や暴力、多額の借金などがあげられます。
このような理由がなく、離婚したい理由が単に性格の不一致でしかないようなケースでは、相手方が離婚に応じてくれない限り、なかなか離婚ができません。
こういう場合、別居していてその期間がある程度長期間になれば、裁判所に「修復不可能」と判断され、強制的に離婚が認められることがあるのです。
離婚が認められるためにどれくらいの別居期間が必要かは、婚姻期間や子供の年齢などの事情によって異なりますが、概ね3年から5年程度別居していれば離婚が認められることが多いと考えられます。
DV,モラハラから逃れられる
(一般的には)夫から、日常的に暴力を受けたり、暴言を吐かれて精神的に傷つけられている女性も少なくありません。
このようなケースでは、別居することによって、肉体的暴力・精神的暴力から逃れることができます。
ただ、別居先がわかってしまうと、夫が押しかけてきて連れ戻そうとするときもあるので、このようなケースの別居では、別居先が夫に知られないようにする必要があります。
精神的なストレスから解放される
DVやモラハラがなくても、関係が良くない相手と一緒に暮らすことは、非常に大きなストレスを抱えるものです。
別居することによって、とりあえずは、このようなストレスから解放されることができます。
冷静に今後のことを考えることができる
相手と距離を置くことによって、今後夫婦関係を清算して離婚するか、それとも同居を再開して関係を修復するかなど、今後の夫婦のあり方について、冷静に考えることができるというメリットも、別居にはあります。
別居のデメリット
相手に財産隠しされる可能性がある
別居をしてしまうと、相手の行動を監視したくてもできなくなります。その結果、財産分与の対象となる預金の通帳を隠されたり、別な口座に移されるなど、財産隠しをされてしまう恐れがあります。
そうすると、いざ離婚しようとなったときに、本来もらえるはずの財産分与がもらえないといった事態が生じる恐れがあります。
自宅に入ることが難しくなる
別居すると、相手が怒って、自宅の鍵を変えてしまい、例えば荷物を取りに行こうとしても、中に入ることができないといった事態が生じる恐れがあります。
法的にも、一度別居してしまうと、元の自宅に無断で入ることは、住居侵入罪に該当する恐れが出てきます。立ち入る必要がある場合には、いちいち相手の許可をとる必要が生じかねず、大きなデメリットとなります。
復縁が難しくなる可能性がある
仮に別居して熟考の末、やり直しをしたいという結論に至ったとしても、相手の方の気持ちが離れてしまい、やり直しがきかず、そのまま離婚という事態になることもあります。
別居に際して気をつけておくべきこと
相手の財産は調べておくべき
先ほどもお話ししたとおり、別居すると、相手方が財産隠しをしてしまい、いざ離婚というときに、正当な財産分与を受けられなくなってしまう可能性があります。
そのため、別居を考えるのであれば、その前に、預金通帳や有価証券など、相手が持っているであろう財産を調べておくことが大切です。
異性との交際には気をつけよう
別居後に配偶者とは別な異性と交際しても、原則的には不倫にならず、その後、離婚有責配偶者として離婚請求できないということにはなりませんし、慰謝料請求もされません。
ですが、別居後すぐに交際が発覚した場合には、別居前から交際していたと認定されてしまう恐れがあります。
そうすると、有責配偶者からの離婚請求として、離婚自体が認められなくなったり、慰謝料請求されることもあり得ます。
後日復縁したくなった場合にも、非常に難しくなるので、異性との交際は慎重に行いましょう。
離婚のメリット・デメリット
離婚のメリット
婚姻関係が清算できる
離婚の最大のメリットは、相手との間の婚姻関係を清算できるということにあります。
相互の扶養義務も将来の相続の問題もなくなります。
再婚することが可能となる
仮に交際相手がいた場合には、晴れて再婚することが可能となります。
令和4年法改正により、女性の待婚期間もなくなり、離婚すればすぐに再婚することが可能となりました。
財産分与や慰謝料を得られる
離婚に伴い、婚姻後に双方の名義で取得した財産については財産分与が行われることになります。
また、相手に不倫をされたり、DVや暴言等による精神的暴力があった場合などは、慰謝料請求もしやすくなります。
慰謝料請求は別居中も可能ですが、復縁する可能性がある場合には請求が心理的にしにくいほか、離婚していない場合に比べて認められる金額が少なくなりますので、注意しておきましょう。
公的扶助を得られるようになる
先ほども書いたとおり、離婚しなければ認められないひとり親に対する公的扶助を得られるようになるメリットがあります。
離婚のデメリット
収入が減る可能性がある
夫婦共稼ぎの場合には、離婚すれば、相手方の収入が家計に入らなくなります。
また専業主婦が離婚した場合には、離婚後に夫並みの収入を得ることは一般的に非常に困難です。
収入減により家計がひっ迫する恐れがあります。
離婚後の手続が煩雑
離婚後に、旧姓に戻す場合には、それに伴って、運転免許証や健康保険証等々、諸々の名義をすべて急性に書き換える手続きが必要となります。
それ以外にも、一般的に女性が離婚をすると、夫の戸籍から外れて新しい戸籍を作り、子供をその戸籍に入れるといった手続があり、非常に煩雑です。
離婚前に別居を先行するべきか?同居のまま離婚準備すべきか?
すぐにでも別居して離婚準備を進めるべき場合
以上のとおり、別居にも離婚にもそれぞれメリット、デメリットがあり、一概に、離婚の前にまず別居すべき、あるいはすぐにでも離婚すべきということはできません。
しかし、DVやモラハラなどの精神的暴力を受けているようなケースでは、なるべく早急に別居して、それから離婚の手続を開始すべきといえます。
DVやモラハラのケースでは、同居自体が精神的な負担になりますし、同居の上相手と離婚について話し合いをしようとしても、相手がこれに応じず、かえって攻撃を受けてしまう可能性があるからです。
別居は慎重にして相手と話し合いをした方が良い場合
離婚を考えていても、その理由が単に性格の不一致で、まだ結論が出ていない場合には、拙速に別居せずに、まずは相手方と話し合いをするべきでしょう。
相手と話し合いをしたり、相手の財産を調べたり、弁護士に相談しながら、離婚した方が自分の取ってプラスなのか、まずは別居をした方がいいのか、このまま婚姻生活を続けるべきなのか検討するのが良いと考えられます。