養育費の強制執行|差し押さえ方法や申立方法をわかりやすく解説

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youikuhi kyouseisikkou

子どもがいる夫婦の離婚では、離婚後の養育費の支払いについてトラブルになることがあります。

一人親家庭ですと離婚した配偶者からの援助もなく生活をしていくのは非常に大変です。
また、養育費は、子どもの健全な成長のために必要不可欠な費用ですので、義務者の逃げ得が許されてはいけません。

今回は、養育費の強制執行手続きに関して、差し押さえや申立方法などについて解説します。

養育費の強制執行・差し押さえとは

強制執行とは、債務者が債務の履行をしないときに、国が強制的に債務者に対し債務の履行をさせる制度のことをいいます。

たとえば、養育費の支払が滞った場合に、強制執行の申立てをすることで、相手の財産から強制的に滞納していた養育費を回収することができるというものです。
公正証書や調停・審判などで決まった養育費が任意に支払われないというケースでは、強制執行が債権回収をする手段として非常に有効な手段となります。

強制執行については、民事執行法で詳細なルールが定められています。
2020年4月1日から改正民事執行法が施行されており、養育費などの強制執行が従来よりも利用しやすくなりました。

養育費の強制執行をするための2つの条件

養育費の支払いが滞ったからといって直ちに強制執行ができるわけではありません。強制執行するためには、以下で説明する要件を満たす必要があります。

強制執行の条件① 債務名義を取得していること

強制執行をするためには、債務名義を取得していることが必要です。
債務名義とは、債権の存在や範囲を公的に証明した文書のことをいいます。たとえば、「毎月〇万円の養育費の支払い義務がある」ということを公的に認めた文書のことです。

このように債務名義は「公的」な文書であることが必要ですので、当事者が養育費の支払いについて合意をした契約書では債務名義にはなりません。
債務名義に該当する文書としては、以下のものがあります。

  • 執行文がいる債務名義:判決正本、和解調書正本、民事調停書正本、公正証書正本
  • 執行文がいらない債務名義:家事調停調書正本、仮執行宣言付支払督促正本、家事審判書正本(要:確定証明書)

上記の文書のうち、公正証書以外のものは裁判所で作成する文書ですので、裁判所以外で作成できる債務名義は公正証書だけです。
ただし、公正証書であればなんでもよいというわけではなく、「執行認諾文言」付き公正証書でなければなりません。

執行認諾文言付き公正証書とは

執行認諾文言付き公正証書とは、公正証書の条項で「債務者は、本証書記載の金銭債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服する旨陳述した」というような一文が入っているものをいいます。
これが入っているか否かで強制執行できるかどうかが変わってきますので、養育費の公正証書を作成しようとするときは、必ず執行認諾文言が入っているかを確認するようにしてください。

なお、執行認諾文言のない公正証書や、当事者同士で作成した契約書等の場合は、強制執行の前に訴訟等を行い、別途債務名義を手に入れる必要があります。

強制執行の条件② 相手の財産を把握していること

強制執行の対象となる代表的な財産としては、土地建物などの不動産、現金や高価な貴金属美術品などの動産、預貯金や給料などの債権などがあります。

強制執行をする場合、申立てさえすれば、裁判所が勝手に相手の財産を見つけて差し押さえてくれるというわけではなく、強制執行の対象となる財産を申立人の側で特定する必要があります
たとえば、給料を差し押さえるのであれば会社を、預貯金を差し押さえるのであれば金融機関と支店を特定して行わなければなりません。

もっとも、夫婦だったからといて、元配偶者の財産をすべて把握しているわけではないでしょう。
離婚後、元配偶者が転職していた場合には、職場もわからないということも珍しくありません。

このように、養育費の強制執行をするにあたっては、相手の財産を特定しなければならないというのが大きなハードルとなっていました。
しかし、2020年4月に民事執行法が改正されたことにより、相手の財産の特定が容易になり、従来よりも強制執行の手続きが利用しやすくなりました

法改正で便利になった強制執行

民事執行法が改正されたことにより、相手の財産を特定するための財産開示制度の実効性が向上されました。

財産開示制度とは、債務者に対して強制執行の対象となる財産に関する情報を開示させるための手続きです。
しかし、従来の財産開示制度には以下のような不都合があり、実際にはあまり使えない制度でした。

  • 財産開示に応じない場合の制裁が「30万円以下の過料」という行政罰のみ
  • 仮執行宣言付き判決、支払督促、公正証書では財産開示制度を利用でない
  • 第三者に対し財産情報の開示を求めることができない

これに対し、改正後の財産開示制度では、以下のように従来の制度の欠陥が改善されました。
これによって、相手の財産を把握することが可能になり、養育費の強制執行が容易になりました

  • 財産開示に応じない場合の制裁が「6月以下の懲役または50万円以下の罰金」という刑罰に強化
  • 仮執行宣言付き判決、支払督促、公正証書でも財産開示制度の利用が可能
  • 第三者からの情報取得手続きが新設

強制執行がどのように使いやすくなったか、詳しくはこちらの記事で解説しています。

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養育費の強制執行申立方法|必要書類や流れ

強制執行の申立てはどのように行えばよいのでしょうか。
以下では、強制執行の申立てに必要な書類や流れについて説明します。

強制執行申立の必要書類と手数料

強制執行の申立ては、以下の必要書類と手数料を用意し、債務者(相手方)の住所地を管轄する裁判所に対して行います。

強制執行の必要書類

申立書 表紙、当事者目録、請求債権目録、差押債権目録の4つがセットで申立書になります。
債務名義の正本 強制執行の申立てをするには、債務名義の正本が必要です。
また、執行文が必要な債務名義ついては執行文が付いているかどうか確認してください。
執行文の付与や債務名義正本の発行は、債務名義を作成した場所(裁判所や公証役場)で行います。
送達証明書 債務名義の正本または謄本が債務者に送達されたことを証明する文書です。
債務名義を作成した場所(裁判所や公証役場)で発行します。
資格証明書 第三債務者が法人の場合、法人の商業登記事項証明書(代表者事項証明書)が必要になります。
その他の書類 債権者や債務者の住所氏名が債務名義に記載されたものと異なる場合には、戸籍謄本、住民票、戸籍の附票などが必要になります。

手数料

収入印紙 4,000円
養育費の強制執行では、子ども(債権者)の数が増えると、その数に応じて収入印紙が必要になります。
郵便切手 3,000~4,000円
郵便切手の金額と組み合わせは、申立てをする裁判所によって異なりますので、申立てをする裁判所に確認してみてください。

申立後の流れ|申立成立と取立

申立成立

申立書類に不備がなければ、申立が成立となります。

債権差押命令

申立が成立すると、裁判所から、債権者(ご自身)、債務者(養育費支払い義務のある元配偶者)、第三債務者(預貯金口座のある銀行や給料を払っている会社等)に対し債権差押命令が送られます。

第三債務者に債権差押命令が届いた時点で、銀行口座などは停止され、債務者は出金することができなくなります。
また、債権差押命令が元配偶者と第三債務者に送達されたときは、裁判所から債権者に対して送達通知書が送られてきます。

取立

元配偶者に債権差押命令が送達された日の翌日から1週間を経過すると、第三債務者から差押債権を取り立てることができるようになります

元配偶者の会社や口座のある銀行に直接連絡を取り、支払い方法などを相談してください。
取立を完了した場合には、裁判所に取立完了届を提出して、養育費の差し押さえは終了となります。

養育費差し押さえ対象財産の種類3つ

養育費の強制執行をする場合には、差押の対象財産として以下の3つが代表的なものとなります。
以下では、対象となる差押財産ごとに差し押さえの方法を説明します。

給料の差し押さえ

給料差し押さえの範囲

給料の差し押さえの範囲は、給料(税金などを控除した残額)の2分の1までが差し押さえの対象となります。
税金などの控除後の給料が66万円を超える場合には、給料から33万円を引いた残額すべてを差し押さえることができます。

なお、給料手渡しの会社であっても、支払われる前であれば差し押さえをすることが可能です。

未払いの養育費の金額に達するまで給料の差し押さえを継続することができますし、支払期限の到来していない将来の養育費であっても、それを対象として給料を差し押さえることができます。

一度給料の差し押さえをしてしまえば、債務者が会社を辞めるまでは差し押さえの効果は継続しますので、改めて強制執行を申し立てる必要はありません。
ただし、将来の養育費を対象とする場合には、養育費の支払い期限後に支払われる給料からでないと取立をすることができません。

受け取り方法

相手の会社から給料を取り立てる手続きに関しては、裁判所は関与しませんので、自分で会社に連絡をして支払い方法や期限を決めることになります。
未払い額が大きく、毎月継続的に差し押さえる場合は、毎月の支払日を決めて振り込んでもらう形式がよいでしょう。

会社への差し押さえが競合した(他の債権者も差し押さえる)ような場合には、会社が差押分の給料を債権者に直接支払わず、法務局に供託する場合もあります。
その場合には、裁判所が供託金を債権者に配分する手続きをしますので、債権者は裁判所の発行する配当証明書を法務局に提出し、供託金の支払いを受けることになります。

もし仮に、会社が差押分の給料の支払いを拒否した場合には、会社に対して取立訴訟を提起して未払い分の養育費を回収します。

預貯金口座の差し押さえ

差し押さえの範囲

給料とは異なり、預貯金の差し押さえについては差押の範囲に制限がありません。
そのため、差押時点で存在するすべての預貯金が差し押さえの対象となります。

ただし、給料の差し押さえと異なり、将来の養育費に対して預貯金を差し押さえるということはできませんので、その都度、強制執行の申立てをする必要があります。

預貯金の差し押さえするときは、できるだけ残高が多いタイミングで行うことが効果的ですので、差し押さえのタイミングとしては給料日やボーナス支給日の翌日などがよいでしょう。

受け取り方

債権差押命令が預貯金口座のある金融機関に送達されると、対象となる預貯金口座は凍結され、出金ができなくなります。

金融機関に連絡をし、支払い方法や期限について話し合うようにしましょう。

不動産や高価な貴金属等の差し押さえ

給料や預貯金以外にも不動産や動産を対象として強制執行をすることができます。
しかし、不動産や動産を対象とする強制執行は、時間や費用がかかるため、まずは、給料や預貯金への強制執行を検討するとよいでしょう。

不動産の差し押さえ

不動産に対する強制執行は、相手の所有する不動産を裁判所に競売してもらい、その売却代金から未払いの養育費を回収するという手段です。

不動産は売却できた場合には相当な金額になりますので、未払いの養育費が高額な場合でも一括で回収することができるというメリットがあります。

しかし、不動産に対する強制執行は、予納金というお金を裁判所に事前に納めなければならず、対象不動産の評価額によっては数十万円にもなることもあります。
また、競売が完了するまで半年以上期間がかかり、時間や費用がかかる点がデメリットです。

高価な貴金属

高価な貴金属などの動産に対する強制執行も、不動産と同様に裁判所に競売してもらい、その売却代金から未払いの養育費を回収するという手段をとります。

動産に対する強制執行は、不動産に対する強制執行と比較すると、換価までの期間は短く、予納金も低額で済むというメリットがあります。
もっとも、動産に対する強制執行の場合には、確実に売却できる見込みが低いため、元配偶者が余程高価な動産を確実に所持している場合以外には実効性は低いといえます。

取立終了後の手続き

財産の差し押さえをして、第三債務者(会社や金融機関など)から、未払いの養育費を回収した場合には、裁判所に対して「取立完了届」を提出します。
これで、強制執行の手続きは終了となります。

まとめ

強制執行では、①債務名義が必要で、②相手方の財産を特定する必要があります。

また、申立後、銀行や会社と支払方法について相談したり、場合によっては申し立てても養育費の未払い額に足りないこともあります。

養育費の強制執行は意外と難しい手続きですので、まず一度弁護士に相談されることをおすすめします。

 
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ご相談だけでも、「安心した」「解決の糸口が見えた」と思っていただけるよう心がけています。全国対応ですのでお任せください。

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