年収別に養育費の相場を解説!年収200万・300万・400万・500万・600万・1000万
子連れで離婚を考えた際に必ず問題となる養育費。大体どのくらい受け取れるのか、相場を把握しておくことは離婚の準備をする…[続きを読む]
離婚時に養育費の支払いについて取り決めた場合、その後毎年問題になるのが「所得税」「住民税」「確定申告」です。
毎月受け取る養育費が所得税・住民税の課税対象になるのか、さらに扶養控除との関係はどうなっているのか、正確なところがわからないという方も多いでしょう。
また、養育費の金額が相場よりも大きい場合には「贈与税」の課税も問題になり得ます。
このように、養育費にまつわる税金の問題は、受け取る側にとっても支払う側にとっても密接に関連しますので、正確な取り扱いを理解しておきましょう。
この記事では、養育費に関する所得税・住民税・贈与税の課税上の問題、確定申告と扶養控除、重複して扶養控除を受けれるのか、16歳未満はどうなるのか、非課税かどうか、税金かかるのかについて詳しく解説します。
養育費を受け取る側の方は【養育費は課税対象になる?|養育費を受け取る側の注意点】から、支払う側の方は【養育費を支払う側は扶養控除を受けられる?】からご覧ください。
養育費が課税によって目減りしてしまうとすれば、受け取る側としては生活に困窮するリスクが高まってしまいます。
養育費は生活に必要なお金として受け取るものですので、税金・課税による目減りが極力発生しないように、税法上の配慮がなされています。
まずは、養育費が所得税・住民税・贈与税の課税対象になるか、非課税になるか点について、税務上の取扱いを見てみましょう。
一般的に所得税と住民税などの税金は、原則としてその年に得たすべての所得に対して課税されます。
ただし、所得の性質上課税することが適当でないと判断されるものについては、非課税所得として所得税・住民税の課税が行われません(所得税法9条1項)。
養育費については、基本的には「扶養義務者相互間において扶養義務を履行するため給付される金品」に該当し、同項15号において非課税所得として掲げられています。
したがって、養育費が所得税・住民税などの税金の課税対象になることはなく、この点では確定申告時に問題になることはありません。
養育費は、親として負っている子に対する扶養義務の履行として支払われるものなので、そもそも「贈与」ではありません。
贈与税について定める相続税法の規定上も、「扶養義務者相互間において生活費または教育費に充てるためにした贈与により取得した財産」は、原則として贈与税が非課税である旨が定められています(相続税法21条の2第1項第2号)。
したがって、贈与税などの税金との関係でも、養育費は原則として非課税です。
ただし贈与税については、次の項目で詳述する要件を満たす場合には、養育費に対する課税が行われる可能性があるので注意しましょう。
繰り返しになりますが、所得税・住民税・贈与税のいずれも、受け取った養育費は原則として非課税であり、確定申告のときにも問題にならないことがほとんどです。
ただし、贈与税については、以下の2つのどちらかに該当する場合は、養育費に対する課税がなされる可能性があります。
贈与税が非課税となるのは、養育費の名目で支払われる財産の中でも「通常必要と認められるもの」に限られます(相続税法21条の3第1項第2号)。
養育費は、夫婦の収入バランス・子の人数・子の年齢・自営業と給与所得者の別の各要素に応じて、算定表に基づき金額相場が決まりますが、当事者同士の合意によって相場と異なる養育費を定めることが可能です。
しかし、算定表上の金額相場に比べてあまりにも高額の養育費が支払われている場合には、子どもの扶養のために通常必要な範囲を超えた金銭の授受が行われているものとして、養育費の一部が贈与であると判断される可能性があります。
養育費の一括払いの場合も同様です。一括で支払うと高額の養育費を支払うことになるため、養育費の支払いを利用した贈与であると判断される可能性があると考えられます。
一括払いは、金額を月払いに換算したうえで、中間利息控除なども考慮して金額の相当性が判断されるため、計算方法が複雑になりますので、弁護士などの専門家に相談したほうが良いでしょう。
養育費が贈与税非課税となるための要件として、「生活費または教育費に充てるため」という目的が要求されています。
この目的要件はそれほどシビアにチェックされるものではなく、受け取った側には使用目的についての裁量が広めに認められます。
たとえば養育費を預貯金として貯めておく場合、すぐに生活費や教育費に充てるわけではないとしても、将来の生活費や教育費に充てる予定であると説明できるので、贈与税が課税されることはまずないでしょう。
しかし、子どもの養育とは全く関係がない目的で養育費を使った場合には、贈与税の課税対象になり得ることに念のため注意しておきましょう。
目的要件の不充足を理由として、養育費に贈与税が課税される可能性がある場合の例としては、以下のパターンが考えられます。
養育費の一部が贈与と判断される場合、贈与部分については、110万円分の基礎控除が差し引かれた後、以下の税率により贈与税が課税されます。
課税価格(基礎控除後) | 200万円以下 | 300万円以下 | 400万円以下 | 600万円以下 | 1000万円以下 | 1500万円以下 | 3000万円以下 | 3000万円超 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
税率 | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | - | 10万円 | 25万円 | 65万円 | 125万円 | 175万円 | 250万円 | 400万円 |
参考:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
所得税・住民税の計算に当たっては、各種所得控除を適用することによって、課税所得の金額を減らし、税額を抑制することができる仕組みになっています。
養育費との関係では、支払う側に「扶養控除」が適用されるかどうかが問題になります。
扶養控除が適用されると所得税・住民税の金額が減るメリットがあるので、ご自身の状況に照らして、扶養控除の適用を受けられるかどうかを確認しておきましょう。
まずは、一般的に扶養控除が適用されるための要件を押さえておきましょう。
扶養控除の適用を受けるには、所得税法上の扶養親族を扶養していることが必要になります。
扶養親族に該当するための要件は以下のとおりです。
収入のない子どもは、親と「生計を一にしている」と認められる限り、上記の扶養親族の要件に該当し、扶養控除の適用が受けられます。
結論としては、離婚後養育費を支払っている非監護親(別居親)についても、子と「生計を一にしている」ものとして、扶養控除の適用を受けられる可能性があります。それというのも、「生計を一にしている」という要件については、必ずしも親と子が同居していることは要求されないからです。
たとえば、大学生の子どもが大学の近くで下宿していて、親が仕送りを行っている場合でも、親と子が「生計を一にしている」と判断され、扶養控除の適用を受けられます。
この理屈は、親同士が離婚して、非監護親が養育費を支払っている場合についても同様です。
つまり、養育費という形で子に対する扶養義務を履行していることをもって、親と子が「生計を一にしている」と判断され、扶養控除の適用を受けられる可能性があるのです。
ただし、養育費を離婚時に一括して支払う場合などには、扶養控除の適用が認められる可能性が低いことに注意しましょう。
養育費を一括で支払う場合、それ以降は養育費の支払いが行われないことから、継続的な生計の同一性が肯定されにくいのです。
もし養育費を支払う側が扶養控除の適用を受けたい場合には、一括払いではなく、月払いや年払いなど定期払いを選択しましょう。
なお扶養控除は、1人の扶養親族について重複して適用することはできません。
離婚後に養育費のやり取りが行われるケースでは、養育費を支払う非監護親も子どもを扶養しているといえますが、当然監護親も子どもを扶養していると判断されます。
このように、扶養者が2人いる場合には、どちらか一方にしか扶養控除を適用することはできないのです。
扶養控除をどちらの親に適用するかは、当事者同士の話し合いによって自由に決めることができます。
養育費を支払う側が確定申告で扶養控除の適用を受けたい場合には、離婚時に離婚条件を取り決める際、扶養控除を自分に適用すべき旨を合意し、離婚協議書の中に明記しておきましょう。
養育費を支払う子どもについて扶養控除を適用する場合、扶養控除額は以下のとおりです。
その年の12月31日現在において子どもが16歳以上19歳未満の場合 | 38万円 |
---|---|
その年の12月31日現在において子どもが19歳以上23歳未満の場合 | 63万円 |
その年の12月31日現在において子どもが23歳以上の場合 | 38万円 |
ちなみに16歳未満は控除対象ではありません。上記の金額が、所得税・住民税の金額計算の際に課税所得から控除されます。
経済的に余裕がなく、養育費と税金の両方を支払うことができないというケースがたまに見受けられます。
この場合、どちらを先に支払わなければならないかについて、法律上のルールは存在しません。
ただし、養育費と税金は、どちらもすでに支払い義務が生じているものですので、支払わないという選択肢は存在しないことに注意しましょう。
養育費については、離婚当時と収入などの経済状況に変化が生じた場合には、相手に対して減額を請求できます。必要に応じて弁護士に相談しつつ交渉するか、養育費減額調停を申し立てましょう。
また税金については、一定の要件を満たす場合には、支払い猶予が認められる場合があります。支払い猶予の詳細については、税務署にご確認ください。
養育費は子の生活費・教育費に充てる場合に限って、贈与税が非課税となります。
逆に言えば、それ以外の目的に消費する場合は、養育費という名目で受け取った金銭であっても、贈与税の課税対象になり得ます。
この点、受け取った養育費を貯蓄に回しているとしても、将来の生活費・教育費を確保する目的があると認められることが多いので、通常は贈与税の課税対象にはなりません。
もし不安であれば、離婚協議書や離婚調停調書において、「養育費を計画的に貯蓄し、将来の養育に充てる」旨を明記しておくと良いでしょう。
ただし前述のとおり、そもそも受け取っている養育費が相場よりも高額の場合には、養育費としての必要性が否認される可能性があるので注意が必要です。
過去の納税について扶養控除を適用し忘れていた場合、還付申告という手続きをとることにより、5年間遡って扶養控除の適用を受けることができます。
ただし、両方の親が重複して扶養控除の適用を受けることはできないので、離婚した元配偶者が扶養控除の適用を受けていない年に限って、扶養控除の遡及適用が可能です。
今回は養育費と税金、主に住民税、所得税、贈与税と扶養控除、非課税かどうか、確定申告などについて解説しました。
養育費の金額や支払い方法を決定する際には、税金との関係に注意しておかないと、支払う側・受け取る側ともに思わぬ負担が生じてしまう可能性があります。
養育費に関して、税金面での不都合が生じないようにするためには、法律・税務の観点から専門的な検討を要します。
弁護士に相談すれば、養育費を含めた離婚問題について、法律を踏まえた総合的なアドバイスを受けられます。また、適宜税理士とも連携を行うことにより、養育費に関する税務問題についても対応・解決することが可能です。
養育費と税金の問題について不明な点がある方は、一度弁護士にご相談ください。