離婚の年金分割の手続き!3合分割とは?年金分割しないとどうなる?

離婚する際には、慰謝料請求や財産分与などお金に関する様々な手続きを話し合って解決しなければなりません。
そして、財産分与といえば忘れてはならないのが「年金分割」制度です。特に熟年離婚の方にとっては切実な問題です。
年金分割制度については2004年の『厚生年金保険法等改正』によって、厚生年金と共済年金の保険料納付記録の分割が認められるようになりましたので、離婚に際してはこの年金分割についても忘れずに計算して手続きをしなければなりません。
もしも、離婚で年金分割しないとどうなるかというと、将来もらえる年金がシンプルに減ります。
そこで今回は、ブログやYahoo!知恵袋でも話題の離婚時における年金分割の手続きの流れと、必要書類などについて解説したいと思います。
目次
結婚年数が大事!分割できる相場金額・割合・範囲は?
年金分割制度によって分割が可能なのは「年金のすべて」ではありません。
分割ができるのは、「厚生年金と共済年金の報酬比例部分」のみです。したがって国民すべてに加入義務がある国民年金については、そもそも分割の対象ではありません。
また、分割の対象となるのはそれらのうち「婚姻期間」(結婚年数)の部分となります。長ければ長いほど、要するに10年より30年のほうが多額となるため熟年離婚の方にとって重要です。また婚姻以前のものについては年金分割の対象とはなりませんので注意しましょう。
例えば、以下のような場合を考えましょう。
- 夫が結婚と同時に就職し厚生年金に加入した
- 妻は無職で専業主婦のため、国民年金のみ
- 離婚した時点で、夫の厚生年金が140万円の場合
この場合、このうちの半分の70万円が妻の取り分として年金分割をします。
これに対し、結婚前から夫が厚生年金に加入していた場合については、結婚前の分については分割の対象から除外して計算します。
また、夫婦共働きの場合は、婚姻期間に夫と妻で形成した厚生年金を一度合算してそれを半分にして分割することとなります。
年金分割制度の流れについて
ステップ1:情報通知書(入手方法と必要書類)
年金分割は上記のような原則はあるものの、結局は双方の話し合いで決めることとなります。そこでまずは今現在の保険料納付記録を調べることから始めます。
これについては「情報提供請求」という手続きによって行います。夫婦の双方または一方からの請求で保険料納付記録を請求することができます。そのため、相手方が年金額を開示しない場合でも、情報提供請求によって得られる「情報通知書」で知ることができるのです。
情報提供請求を行うための必要書類は以下の通りです。
- 請求者本人の国民年金手帳、年金手帳(※公務員の方は基礎年金番号通知書)
- 戸籍謄本、戸籍抄本等の婚姻期間等を明らかにできる書類
- 世帯全員の住民票の写し等(※事実婚・内縁の妻・夫を証明したい場合。事実婚でも3号分割制度の場合は利用可能です。詳しくは離婚に強い弁護士にご相談ください。)
なお、一方のみが情報提供請求をした場合、すでに離婚している時は請求をしていない相手方に対しても同じ情報を提供します。反対に離婚する前の場合は請求者のみに情報が提供されます。
なお「年金分割のための情報提供請求書」は日本年金機構のサイトからダウンロードも可能です
■参考PDF(日本年金機構)年金分割のための情報提供請求書
ステップ2:合意分割(按分割合について任意の話し合い)
取り寄せた情報通知書をもとに、どのように年金分割をするのかについて話し合います。これを「合意分割」と言います。ここで合意した場合は次のステップへと進みます。
(※按分割合で揉めてしまい、合意分割できない場合は「ステップ6」へと進みます)
ステップ3:公正証書による合意書作成
年金分割の按分割合が話し合いにより決まったら、今度はその内容を法的な書面である公正証書によって合意書を作成します。これがないと、年金分割の請求をすることができません。これについては、離婚に強い弁護士に相談して作成することをお勧めします。公正証書には必ず以下の内容を記載する必要があります。
【年金分割の公正証書への必須記載事項】
・夫婦それぞれの氏名、生年月日・それぞれの基礎年金番号
・年金分割について双方で合意した旨
・合意した年金分割の按分割合
ステップ4:年金分割の請求と期限|必要書類の取得方法
年金分割の話し合いが確定したら、日本年金機構に対して年金分割の請求をしなければなりません。なお、年金分割には次の事由に該当した翌日から起算して「2年以内」という期限がありますので、しっかり時間を計算しておく必要があります。
【年金分割の期限】
・離婚の手続きを終えた時・婚姻を取り消した時
・事実婚(内縁関係)にある人が国民年金第3号被保険者資格を喪失し、事実婚関係が解消したと認められるとき
これらの事由の翌日から2年が経過すると原則として年金分割ができなくなりますので注意しましょう。なお、離婚時の年金分割の請求書のことを「標準報酬改定請求書」といい、日本年金機構のホームページからもダウンロードすることが可能です。
■参考PDF(日本年金機構)標準報酬改定請求書
ステップ5:標準報酬改定請求書にもとづいて改定
標準報酬改定請求書に基づいて、日本年金機構が当事者それぞれの保険料納付記録の改定を行います。
そして計算され改定後の保険料納付記録が当事者双方に通知され年金分割は終了します。
ステップ6:年金調停・訴訟へ(話し合いで分割できない時)
年金分割の按分割合について、話し合いでまとまらない場合は、家庭裁判所における家事調停手続、家事審判手続により按分割合の話し合いを行います。また、場合によっては人事訴訟手続を利用することもあります。調停を申し立てた場合は、調停委員が双方の間に入って和解できるよう調整を手伝ってくれます。
なお、裁判所で年金分割の按分割合に合意した場合は、調停調書が作成されるため、公正証書の作成は不要です。そのまま年金分割の請求をすることとなります。
年金分割の請求における必要書類
年金分割の請求には、標準報酬改定請求書の他に以下のような必要書類を添付して提出しなければなりません。
【年金分割請求の必要書類】
・請求者の年金手帳、国民年金手帳又は基礎年金番号通知書・双方の身分関係を明らかにできる戸籍謄本、戸籍の抄本、全部事項証明書又は個人事項証明書
・当事者の生存を証明できる書類(戸籍の抄本、住民票など)
・按分割合がわかる書類(合意分割の公正証書、調停調書、確定証明書)
なお、提出先は請求者の住所地を管轄する年金事務所となります。
3号分割って何?合意分割との違い
3号分割とは先ほどの合意分割とは違い、2008年から施行された制度です。これは2008年4月以降の第3号被保険者期間について、離婚した際に、第2号被保険者の厚生年金の被保険者保険料納付記録を自動的に半分に計算され分割できるという制度です。
ちなみに、第3号被保険者とは、「第2号被保険者に扶養されている配偶者」要するに専業主婦のことであり、第2号被保険者とは、「厚生年金保険の被保険者と共済組合の組合員」つまり会社員の夫ということになります。
妻の協力あってこその夫の厚生年金であるという考えのもと、離婚に至った場合は、婚姻期間中の厚生年金を自動的に平等に分割して手続きすることができるのです。これを3号分割制度と言います。
できるだけ弁護士を代理人に立てる
このように、年金分割は合意分割で按分割合を話し合って決める場合と、3号分割によって強制的に半分にする方法があります。
合意分割をする場合は、離婚協議のなかの一つの要素として、他の慰謝料や養育費、親権などと合わせて、どのような按分割合にするのか協議をすることが重要です。合意分割については、協議が難航することもありますので、できる限り弁護士を代理人に立てて、公正証書の手続きやその他の財産分与もあわせて交渉を進めることをお勧めします。
年金分割は熟年離婚の方だけではなく若い方にも重要な手続きです。ぜひしっかり理解して分割しましょう。
またその他情報通知書の見方や見本などは日本年金機構のサイトが詳しいのでこちらもご確認ください。今回はブログやYahoo!知恵袋でも話題の年金分割を紹介しました。難しい場合は最寄りの弁護士に相談をしてみましょう。
■参考PDF(日本年金機構)年金分割のための情報通知書の見方などについて