離婚で養育費を一括請求することはリスク大ってホント?相場は?

  • 「離婚することになったが、夫が養育費をきちんと支払ってくれるか不安…」。
  • 「養育費を一括請求するリスクは大きいの?」

そんなお気持ちを抱えている方は多いでしょう。

実際、夫が養育費を滞納したり、養育費がある日不払いになるケースは多く、たくさんのシングルマザーが経済面で苦労しています。

しかし実は、養育費は「一括払い」にしてもらうことも可能です。今回は、養育費を一括請求する必要性からメリット・デメリット、一括請求の相場は1000万円を超えるのか、いくらなのか、税金や贈与税はかからない方法はないのか、一括請求の方法まで解説します。

養育費を一括で請求する心理

そもそもデメリットがあるにもかかわらず、なぜ1000万円などの高額な一括の支払いを求めようとする夫婦が存在するのでしょうか?

一括請求する!妻の心理(支払われる側)

まずは、養育費を支払われる側の心理です。主な理由としては以下の4つとなります。

  • 養育費をずっと支払ってもらえるか不安
  • 一括払いだと確実に受け取れるので安心
  • 相手が途中で逃げ出しそう
  • 相手が再婚する予定がある

先ほどご紹介したように養育費不払いの不安や相手が再婚することを見越して、先に1000万円以上の養育費を確保しておきたいという気持ちがあるわけです。

一括請求される!夫の心理(支払う側)

次に、一括請求をされる、養育費を支払う側の心理です。

  • 相手とこれ以上かかわりたくない
  • 新しい生活をスタートさせたい
  • 子どもに対する義務を先に果たしたい
  • 将来的に支払い続けられるか不安もあるため、払える間に支払っておきたい

つまり支払う側としては「これ以上元妻・元夫に関わりたくない」という心理が心の奥底にあることがわかります。

以上のように、一括請求をしたい方の心理は切実なものがありますが、ここで問題なのはそもそも養育費の一括払い請求は本当に法的に可能なのでしょうか。

そもそも一括請求ってホントに可能か

夫婦間で合意した場合は可能

結論から申し上げますと、夫婦間でしっかり話し合って「一括払いにする」と合意した場合は500万だろうと1000万円だろうと一括請求されることが可能です。

もちろん子どもの監護にかかる費用は毎月かかるものですから、原則としては養育費は「月払い」が基本ということは胸に留めておく必要があります。

しかしここで注意しておくことは、いつでも簡単に「一括」を選択することができない現実的な事情、例えば後述する税金の問題や贈与税の問題などがあるということです。

一括支払いが簡単なケースと難しいケース

例えば現在、子どもが「高校生」である場合は、養育費全体の支払いが少なくなるため、一括払いが簡単となるでしょう。

しかし、養育費の一括請求をする際に、子供がまだ幼い場合は10年〜20年分の養育費を請求する必要があります。

そうなると当然、離婚前に相当な資金・資力が必要で、一括払いが困難となってしまうことが実情です。

また、一括払いが難しいケースとしては、支払う側(夫)が不安になるケースです。

  • 妻がちゃんと子どものために養育費を使わないのではないか?
  • 面会権がなくなるのではないか?

というようなことを、夫が考えて不安になってしまい話がまとまらないケースも多いです。

いずれにしても一括払いは簡単にできるとは言い難い状況があります。

養育費一括請求のメリット

先程も申しました通り、養育費は基本「月払い」が原則ですが、あえて「一括払い」にした際にはメリット・デメリット両方が生じます。

メリット①:養育費の未払い・滞納を回避できる

メリットの1つ目は、養育費の未払いや将来的な不払いを防止できる点です。

実は、養育費の支払いをきちんと受けている母子家庭は、たった2割という結果が出ています。

厚生労働省の平成23年度全国母子世帯等調査の調査結果では、全体の8割程度の支払い義務者が一時的にしか支払いをしない、あるいは一度も支払ったことがないことがわかっています。

離婚当初はしっかり養育費を支払っていたとしても、10年長ければ20年の間、今後ずっと相手が支払い続けるとは限らないのです。

つまり約束した金額のうちどの程度支払ってもらえるのか、どのくらいの期間継続してもらえるのかは、残念ながら運任せといった状況になってしまっています

このような背景があるため、確実に一括払いでお金を確保したいという方が一定数存在するというわけです。

不払いには原因がある

不払いの原因としては「新しい生活への出費」が多いです。

具体的には、恋人ができたことや再婚により、そちらにお金がかかってしまうため、子どもへの養育費が優先的に支払われない状況となってしまうのです。

また単純に「経済的な理由」で支払いが滞ってしまう場合も多いです。

もし万が一、未払い・不払いが発生した場合は、弁護士などに依頼して回収することとなります。

 

メリット②:新しい生活に対する不安が減る

2つ目のメリットとして、新しい生活に対する不安が減る点です。

子どもと2人で生活していくためには、たくさんの準備が必要です。引っ越す場合なら、新しい家を探さなければいけませんし、転校の手続きも必要かもしれません。

専業主婦の場合は、働き先を見つけることも必要となり、一緒に生きて行く子どもの心のケアまでしていかなければならず、今後の生活に対する不安がたくさんあると思います。

そんな中でも、養育費を一括でもらえれば、経済的な不安・負担は減ります。

メリット③:相手と縁が切れる可能性も

DVやモラハラなどの暴力がある場合に、きっぱりと相手と縁が切れる点もメリットです。

精神的・肉体的暴力がある場合は、一刻も早く相手から離れる必要があります。しかし、子どもがいる場合にはそれもうまくいかないケースも存在します。

離婚はできたとしても、養育費の支払いが滞ると、相手に連絡しなければいけません。婚姻中に暴力があった場合は、相手と話すことも苦痛だと思います。

一括払いで済めば、相手と縁を切ることもできるのです。

養育費一括請求のデメリット

では、養育費一括請求のデメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。

一括だと贈与税が発生!かからない方法は?

まず、一番のデメリットは税金つまり「贈与税」がかかることです。

養育費を一括払いにすると、課税の対象になります。養育費は基本的に大きな金額になることが想定できます。この場合、贈与税が課税されてしまい、いくらか損することになってしまいます。

税金である贈与税がかかるのは「受け取った方」です。

そこで贈与税がかからない方法を模索しようとする方もいるかもしれませんが、原則そのまま受け取ると贈与税がかかります。隠れて一括で受け取ろうとしても課税当局にバレる可能性があるため、やめましょう。

ただかからない方法というわけではないですが、「信託財産」を検討という手法はあります。こちらは下記、後述致します。

なお、相続税法には、非課税なものとして「扶養義務相互間において、生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」(同法21条の3第1項2号)をあげています。

一括払いの養育費はこれには含まれず非課税とはなりません。あくまで月々支払われる養育費が非課税となります。こういった点がデメリットの一つです。

養育費全体の金額が減額される

次に、養育費の金額が減額される可能性があるというデメリットを見てみましょう。

養育費を一括払いとする場合、高額になることが予想されます。このとき、支払う側としては少しでも出費を抑えたいと考えます。

そのため、養育費の金額について「一括で支払う代わりに交渉したい」と言われてしまう事が多いのです。

また中間利息によっても金額は下がります。毎月払いにすると、「月額×12ヶ月×15年」というように、計算することになりますが、これを一括払いとすると中間利息が考慮され、「月額×12ヶ月×15年」の計算で出た金額よりも少なくなってしまいます。

中間利息とは、本来なら将来受け取るはずの利益を現在で換算するために、利息を控除するというものです。この中間利息の控除により、分割払いよりも一括払いのほうが受け取れる金額が少なくなってしまいます。この点もデメリットと言えるでしょう。

養育費一括払いに関するよくある質問

次に、養育費一括払いに関する疑問に答えていきたいと思います。

①養育費の一括相場はいくら?1000万超えるの?

多くの方が質問されることのひとつとして、養育費の相場はいくらなのかというのがあります。

実際のところ、夫婦それぞれの年収や子どもの年齢や子供の人数によっておおよそいくらが相場であるのかを知ることはできます。

つまり相場と言っても、一律いくらというものが存在するわけではありません。

具体的には、家庭裁判所で利用されている養育費算定表をご覧ください。

*参考 養育費算定表

養育費算定表で養育費を換算してみると、子どもが1人で14歳以下の場合、夫の年収500万円、妻250万円の場合は月々4-6万円が相場となります。この範囲内で夫婦で取り決めをしていくケースもあれば、個別事情を考慮して増加することもあります。

また一括請求すると考えて、上記のケースで仮に6万円で20年支払うという風にかなり単純に計算すると「6万✕12ヶ月✕20年」で1440万円となり、1000万円を超えます。

ただし、一括払いの場合は、贈与税や中間利息を考慮すると、総額は分割払いのケースより低くなる可能性があるでしょう。

②養育費の追加請求の可能性はある?

養育費を支払う側としては「一括で支払ってこれで終わり」というつもりだったのに「あとから追加請求」されないかどうかが不安になりますよね。

また支払われる側としては、「学費が上がっても変更はできないの?」という疑問も生じます。

「追加請求が可能か」という疑問の答えとしては、離婚条件の内容次第ということになります。

学費が上がった、子どもが難病にかかってしまったなどの事情の変更は常につきまといます。つまりどのような条件なら、追加支払いをするのかといったことを養育費の取り決めを交わす際に、検討しておく必要があります。

逆に「養育費は一括払いで全て精算する」というのであれば、それを条件に加える必要があります。

上記のような取り決めをしていないケースでは、ケースバイケースとなって、学費や医療費が理由であれば、追加請求の余地が発生します。

ちなみに支払われた側の管理ができておらず、交友費に使用したり、計画通りに出費できていないケースなどでは、追加請求は認められないと考えるのが妥当でしょう。

③調停で養育費の一括払いを請求できる?

一括払いの合意がなかなかまとまらない場合、調停離婚を考える方もいらっしゃるでしょう。

調停での請求は、結論からいうと、可能です。

離婚調停を行う場合には、申立書を家庭裁判所に提出する必要があります。

申立書の中には、申立ての趣旨という項目があり、その中に養育費に関することを記載する場所があります。ここに養育費の金額を含め、一括払いにしてほしいことを記載します。

一括払いを希望することを記載することで、申立て自体が却下されないか不安になる方がいらっしゃいますが、この点は心配いりません。

申立てが却下されるのは、法律違反が明らかである場合などのケースであるからです。

もっとも、調停中に調停委員や相手方の弁護士から、分割払いを勧められることはあるかもしれません。納得できない場合は、調停不成立となり、夫婦のみの話し合いに戻るか裁判になります。

裁判の場合は、後述しますが一括払いにしてもらえる可能性は極めて低くなります。

以上が、養育費の一括払いでよくある疑問となります。これら以外にも、疑問はあると想いますが、必要な場合は専門家である弁護士に相談してください。

最後に、養育費を一括払いにするための方法と、注意点をご説明します。

養育費一括払いを取り決める際の注意点

では、養育費の一括払いを請求したい場合、どのように話し合いを進めていけばよいのでしょうか。

基本的に夫婦間の合意があればOKとなりますがいくつか注意点があります。以下でご紹介していきます。

内訳をわかるように定めること

合意内容を文書にまとめる際に注意する点があります。

文章の内容としては、一括払いにすること、養育費の金額、支払い時期を書いていきますが、「何にいくらかかるのか」という内訳を記しておくことが一番大切です。

例えば、教育費、生活費、医療費、娯楽費などとカテゴリに分けてそれぞれに(月額3万円×12ヶ月×15年)というようにきっちり内訳を示していきます。

なぜかと言いますと、将来的に学費等に変更が生じた場合に、理由をもって請求するためです。

なお、子どもが複数いる場合には、それぞれ事情が異なるので各人の内訳を定めるようにする必要があります。

裁判はできる限り避けること

仮に、合意できず離婚裁判になってしまった場合には、養育費は分割払いとなります。

なぜなら、裁判所としては、原則として一括払いを認めていないからです。例外的に、一括払いが認められることはありますが、それは「長期的に確実な履行が期待できないようなケース」と裁判所が認めた場合のみです。

具体的には、支払い義務者が定職についていない、前妻との間で子どもがいるのに養育費を支払っていない、支払う意思がない、などの事情が必要です。

信託財産を検討すること

養育費を一括払いにする場合、税金である贈与税がかかってしまいます。

これを避けるためには、信託財産として信託銀行と契約を結ぶことが得策です。これは信託契約といって、一括支払ってもらった分を信託銀行に預ける方法です。

月々分割で受け取る契約をすれば、贈与税をかけずに養育費を受け取ることができます。毎月受け取る契約をしてしまうと、一括でおろすことはできなくなってしまいますが、「子どものために使うこと」が一定程度保証されることになるため、合意がスムーズに進むというメリットもあるでしょう。

もっとも、税金について詳しくは税理士に相談する必要があります。養育費の一括払いを信託財産にする場合は、税理士に相談することも考えてみましょう。

文書をまとめる手段 – 公正証書

最後に、一括払いの合意を文書でまとめる手段についてご説明します。

合意についてまとめた文書は、そのままそれぞれが保管することも可能です。しかし、紛失のリスクや内容に問題がないかをチェックすることも後々のトラブルを防ぐ上では重要です。そこで、おすすめするのが公正証書となります。

実際に、分割払いであっても、離婚条件に関する取り決めは、公正証書契約が一般的です。公証人役場の公証人に文書のチェックを行ってもらい、取り決めに法律上問題がないことを確認してもらいます。

公正証書にしてもらうことには3つのメリットがあります。

1つめは20年間公証役場で保管してもらえることです。当事者が文書を紛失しても、内容を証明することができます。

2つめは、公正証書に記載された内容は裁判でも有効だということです。公正証書の内容は公証人が確認した内容です。基本的に裁判で内容が覆されるといったことはありません。むしろ証拠として利用することができます。

3つめは、強制執行をかけられる点です。一括払いの場合は、「未払い」の可能性がほぼないといえるため、問題にならないかもしれませんが、そもそも支払いをしないというケースも考えられます。そんなときでも、強制執行認諾約款というものを公正証書につけておけば、給料に強制執行をかけることもできるのです。

このように、養育費の一括払いは公正証書にしてまとめるのがおすすめです。

 

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執筆・監修
服部 貞昭
ファイナンシャル・プランナー(CFP・日本FP協会認定)
2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)
東京大学大学院 電子工学専攻修士課程修了
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