共同親権とは|メリット・デメリット・法改正を解説【2024年最新版】

旧Twitter(X)上では「離婚後共同親権は、なぜ進まない」「日本の親権はおかしい」と現行の親権制度への不満のつぶやきが多いです。また逆に日本での「共同親権」の導入について反対意見も多いです。

現在、「離婚後共同親権」の導入が法制審議会の家族法制部会において、議論されています。

離婚後共同親権にはメリット・デメリットの両面があり、法制審議会でも議論が分かれている状況です。

今回は共同親権について、現行の単独親権と比較した場合のメリット・デメリット、反対意見やなぜ進まないのか、連れ去りや養育費、モラハラ・DVとの関係、既に離婚してる場合の遡及、今後の法改正の展望などの最新の2024年版で解説します。

【2024年追記】離婚後共同親権の最新ニュース

「離婚後共同親権」に関する最新情報が広く報道されています。

共同親権の導入をめぐっては、長年にわたり様々な議論が重ねられてきました。2021年に入ると、法制審議会において本格的な検討が開始されました。約2年半に及ぶ審議を経て、ついに2024年1月の法制審議会の部会で、共同親権導入に向けた民法改正の要綱案が取りまとめられています。

この要綱案を受けて、法務省は2024年の通常国会に民法改正案を提出する方針であると報じられています。仮にこの法案が2024年の国会で可決成立すれば、施行に向けた一定の準備期間を経た上で、早ければ2025年から共同親権制度が開始する可能性があります。

しかし一方で、国会での審議がどのように進むかによっては、法案成立が先送りされる可能性もあります。

いずれにしろ、離婚後共同親権の導入についての議論が進行中であり、今後、家族のあり方に影響を与える可能性があると言えるでしょう。

共同親権とは|単独親権との違い

「共同親権」とは、離婚後に父母の両方が子どもの親権を有することを意味します。

日本の民法では、父母が離婚をする場合、いずれか一方を親権者と定めることになっています(民法819条1項、2項)。つまり、日本では「単独親権」のみが認められており、共同親権は認められていません。

しかし最近では、法制審議会の家族法制部会において共同親権の導入が議論されており、一律単独親権とする現行民法のルールが変更される可能性が生じている状況です。

共同親権に関する法改正議論が行われている理由|連れ去り・養育費

共同親権に関する法改正議論が行われているのは、親権を失った親が子どもの養育に関わりにくいという、単独親権のデメリットが指摘されているためです。

単独親権を採用する日本では、離婚後の非親権者と子どもの面会交流の実施状況や、非親権者による「養育費の支払い率が低調」となっています。そこで、父母双方の養育責任を明確化し、子どもが離婚した両親と関わり合う機会を増やす目的で共同親権の導入が議論されているのです。

また現状では、親権を獲得したい余り、子どもと一緒に生活しているという既成事実を作るため、離婚成立前に一方の親が子どもを連れ去ってしまう事案、子どもの連れ去りも報告されています。共同親権の導入は、このような養育費や連れ去りトラブルの減少にも寄与することが期待されています。

共同親権のメリット・デメリット

離婚後共同親権には、単独親権と比較した場合に、メリット・デメリットの両面があります。
今後の法改正に関する議論では、共同親権のメリットを重視して導入に舵を切るか、それともデメリットを懸念して導入を見送るか、どちらの方向へ進むのかが大きな焦点です。

共同親権のメリット

共同親権の主なメリットとしては、以下の養育費など各点が挙げられます。

①両親がともに子どもの養育について責任を持つ

父母双方に親権者としての権利が与えられることで、養育に関する両親の責任が明確化され、いっそう積極的な子どもの養育への関与を促す効果があると考えられます。

面会交流の途絶や養育費の不払いなどの問題解決にも、共同親権による責任の付与が一定程度寄与すると期待されています。

②離婚時の親権争いを回避・軽減できる

父母双方が親権を持つという選択肢が認められれば、どちらか一方しか親権を持てない単独親権に比べて、離婚時の親権争いを回避・軽減できる効果が期待されます。
一部で問題になっている子どもの連れ去りについても、共同親権を認めることで防げる部分があると考えられます。

なぜ反対?進まない?共同親権のデメリット

以上のようなメリットがあるのですが、共同親権には反対意見もあり、議論がなぜか進みません。共同親権には以下のようなデメリットもあります。なぜ進まないのかが分かってくるかと思います。

①親権者間で意見が対立し、養育に関する意思決定が難航する

共同親権者である父母の意見が対立した場合、どちらの意見を採用するかは難しい問題です。

水掛け論になってしまい、子どもの養育に関する意思決定が全くできない事態にもなりかねません。

②子どもに負担がかかってしまう場合がある

別の家にいる父母の双方に対して過度に配慮したり、面会交流に多くの時間を割くことを強いられたりするなど、共同親権がかえって子どもの重荷となってしまう可能性もあります。

③DVやモラハラの被害から逃れるのが難しくなる

父母のいずれかがDVやモラハラを働いている場合、単独親権であれば離婚によって親子共々逃げられる面があります。

これに対して、共同親権の場合は親権者の地位が残ってしまうため、配偶者と子どもがDVやモラハラの被害から逃れにくくなる懸念があります。こういった内容での反対意見は実際に多いのです。

共同親権に関する法改正の展望

法改正はいつから?

共同親権はいつからなのかと考えている方もいるでしょう。

ただ、共同親権の導入については、メリット・デメリットの両面、反対意見が世論、ツイッターなどのSNSにあることも踏まえて、引き続き法制審議会の家族法制部会で議論が続けられています*

*追記:上述の通り、法務省は2024年の通常国会に民法改正案を提出する方針であると報じられています。仮にこの法案が2024年の国会で可決成立すれば、施行に向けた一定の準備期間を経た上で、早ければ2025年から共同親権制度が開始する可能性があります。

中間試案のたたき台の内容

部会資料16-1では、中間試案のたたき台として「共同親権を認める甲案」と、現行の「単独親権を維持する乙案」が併記されています。実際に共同親権が導入されるかどうかは、今後の議論・検討次第という段階です。

参考:
家族法制の見直しに関する中間試案のたたき台(1)|法務省
https://www.moj.go.jp/content/001376471.pdf

なお甲案では、以下のような内容とされています。

  • 協議離婚の場合は父母が単独親権・共同親権のいずれかを選択
  • 裁判離婚の場合は裁判所が単独親権・共同親権のいずれかを定めるもの

ただし、単独親権・共同親権のいずれか一方を原則とし、他方を例外とする案(甲①案、甲②案)も示されています。

そのため協議離婚の場合でも、完全にどちらかを自由に選択できるようになるかどうかは不透明です。

監護権者を定めるべきという考え方

また、共同親権を選択した場合において、以下内容も併記されています。

  • 父母のいずれか一方を監護権者と定めることを義務付ける案(A案)
  • 監護権者を指定する義務を定めない案(B案、C案)

監護権者を定めるべきという考え方は、親権者間で意見が対立した際に「監護権者の意思を優先して解決を図る」ことなどを主眼としています。

この点についても、どのような考え方が採用されるかは今後の検討次第です。

共同親権導入後|既に離婚している場合|遡及する?

今後共同親権が導入された場合、既に離婚している場合の父母の間でも共同親権が適用されるのか遡及するのかどうかは、重要なポイントです。

この点、中間試案のたたき台では、単独親権を廃止して共同親権に一本化する案は提示されていません

共同親権を導入するとしても、あくまでも単独親権との「併用」となる見込みです。

したがって、既に離婚している場合の、父母の間では、基本的には単独親権を維持する取扱いがなされると考えられます。

ただし、共同親権が導入された場合には、現行法令でも認められている親権者変更調停・審判の手続きにより、単独親権を共同親権に変更することは認められるようになるでしょう。

参考:
親権者変更調停|裁判所
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_10/index.html

まとめ

今回は、Yahoo知恵袋!やツイッターなどでも話題の、最新版の日本の離婚後共同親権と法改正について、またメリット・デメリット、反対意見やなぜ進まないのか、モラハラやDVとの関係、連れ去りや養育費についてや、遡及、既に離婚している場合はどうなるかなどを解説しました。

離婚後の共同親権が新たに導入されるか

離婚後の共同親権が新たに導入されるかどうかは、依然として法制審議会における議論の途上であり、現段階では不透明な状況です。

共同親権にはメリット・デメリットの両面があり、特に親権者間の意見対立を解決するのが難しい点や、DV・モラハラの被害から逃れにくくなる点などは、大きなデメリットとして懸念されます。

共同親権を導入する上での注意点

今後共同親権を導入するとしても、法制審議会および国会にて十分な議論を尽くしたうえで、共同親権が持つデメリットを解消し、メリットを最大限活かせるような制度設計を行うことが期待されるところです。

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監修・執筆
阿部由羅(あべ ゆら) 弁護士
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。一般民事から企業法務まで、各種の法律相談を幅広く取り扱う。webメディアにおける法律関連記事の執筆・監修も多数手がけている。
■URL https://abeyura.com/lawyer/

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