共同親権とは|メリット・デメリット・法改正の議論などを解説【2023年最新版】

ツイッター上では「共同親権は、なぜ進まない」「日本の親権はおかしい」と現行の親権制度への不満のつぶやきが多いです。また逆に日本での「共同親権」の導入について反対意見も多いです。今回は、共同親権に関する2022年時点での最新情報をお伝えいたします。
現在、「共同親権」の導入が法制審議会の家族法制部会において、議論されています。
共同親権にはメリット・デメリットの両面があり、法制審議会でも議論が分かれている状況です。2022年8月末にも改正法の中間試案が取りまとめられる予定であり、今後の動向にいっそう注目が集まります。
今回は共同親権について、現行の単独親権と比較した場合のメリット・デメリット、反対意見やなぜ進まないのか、連れ去りや養育費、DVとの関係、今後の法改正の展望などを解説します。
目次
共同親権とは|単独親権とは
「共同親権」とは、離婚後に父母の両方が子どもの親権を有することを意味します。
日本の民法では、父母が離婚をする場合、いずれか一方を親権者と定めることになっています(民法819条1項、2項)。つまり、日本では「単独親権」のみが認められており、共同親権は認められていません。
しかし最近では、法制審議会の家族法制部会において共同親権の導入が議論されており、一律単独親権とする現行民法のルールが変更される可能性が生じている状況です。
共同親権に関する法改正議論が行われている理由|連れ去り・養育費
共同親権に関する法改正議論が行われているのは、親権を失った親が子どもの養育に関わりにくいという、単独親権のデメリットが指摘されているためです。
単独親権を採用する日本では、離婚後の非親権者と子どもの面会交流の実施状況や、非親権者による「養育費の支払い率が低調」となっています。そこで、父母双方の養育責任を明確化し、子どもが離婚した両親と関わり合う機会を増やす目的で共同親権の導入が議論されているのです。
また現状では、親権を獲得したい余り、子どもと一緒に生活しているという既成事実を作るため、離婚成立前に一方の親が子どもを連れ去ってしまう事案、子どもの連れ去りも報告されています。共同親権の導入は、このような連れ去りトラブルの減少にも寄与することが期待されています。
共同親権のメリット・デメリット
共同親権には、単独親権と比較した場合に、メリット・デメリットの両面があります。
今後の法改正に関する議論では、共同親権のメリットを重視して導入に舵を切るか、それともデメリットを懸念して導入を見送るか、どちらの方向へ進むのかが大きな焦点です。
共同親権のメリット
共同親権の主なメリットとしては、以下の各点が挙げられます。
①両親がともに子どもの養育について責任を持つ
父母双方に親権者としての権利が与えられることで、養育に関する両親の責任が明確化され、いっそう積極的な子どもの養育への関与を促す効果があると考えられます。
面会交流の途絶や養育費の不払いなどの問題解決にも、共同親権による責任の付与が一定程度寄与すると期待されています。
②離婚時の親権争いを回避・軽減できる
父母双方が親権を持つという選択肢が認められれば、どちらか一方しか親権を持てない単独親権に比べて、離婚時の親権争いを回避・軽減できる効果が期待されます。
一部で問題になっている子どもの連れ去りについても、共同親権を認めることで防げる部分があると考えられます。
なぜ反対?進まない?共同親権のデメリット
以上のようなメリットがあるのですが、共同親権には反対意見もあり、議論がなぜか進みません。共同親権には以下のようなデメリットもあります。
①親権者間で意見が対立し、養育に関する意思決定が難航する
共同親権者である父母の意見が対立した場合、どちらの意見を採用するかは難しい問題です。水掛け論になってしまい、子どもの養育に関する意思決定が全くできない事態にもなりかねません。
②子どもに負担がかかってしまう場合がある
別の家にいる父母の双方に対して過度に配慮したり、面会交流に多くの時間を割くことを強いられたりするなど、共同親権がかえって子どもの重荷となってしまう可能性もあります。
③DVやモラハラの被害から逃れるのが難しくなる
父母のいずれかがDVやモラハラを働いている場合、単独親権であれば離婚によって親子共々逃げられる面があります。
これに対して、共同親権の場合は親権者の地位が残ってしまうため、配偶者と子どもがDVやモラハラの被害から逃れにくくなる懸念があります。
共同親権に関する法改正の展望
法改正はいつから?→2022年8月末に中間試案
共同親権はいつからなのかと考えている方もいるでしょう。
ただ、共同親権の導入については、メリット・デメリットの両面、反対意見が世論、ツイッターなどのSNSにあることも踏まえて、引き続き法制審議会の家族法制部会で議論が続けられています。
今後は2022年8月末を目処に、共同親権導入を盛り込んだ中間試案が公表される予定です。
中間試案のたたき台の内容
部会資料16-1では、中間試案のたたき台として「共同親権を認める甲案」と、現行の「単独親権を維持する乙案」が併記されています。実際に共同親権が導入されるかどうかは、今後の議論・検討次第という段階です。
参考:
家族法制の見直しに関する中間試案のたたき台(1)|法務省
https://www.moj.go.jp/content/001376471.pdf
なお甲案では、以下のような内容とされています。
- 協議離婚の場合は父母が単独親権・共同親権のいずれかを選択
- 裁判離婚の場合は裁判所が単独親権・共同親権のいずれかを定めるもの
ただし、単独親権・共同親権のいずれか一方を原則とし、他方を例外とする案(甲①案、甲②案)も示されています。
そのため協議離婚の場合でも、完全にどちらかを自由に選択できるようになるかどうかは不透明です。
監護権者を定めるべきという考え方
また、共同親権を選択した場合において、以下内容も併記されています。
- 父母のいずれか一方を監護権者と定めることを義務付ける案(A案)
- 監護権者を指定する義務を定めない案(B案、C案)
監護権者を定めるべきという考え方は、親権者間で意見が対立した際に「監護権者の意思を優先して解決を図る」ことなどを主眼としています。
この点についても、どのような考え方が採用されるかは今後の検討次第です。
共同親権導入後|既に離婚している父母はどうなる?
今後共同親権が導入された場合、既に離婚している父母の間でも共同親権が適用されるのかどうかは、重要なポイントです。
この点、中間試案のたたき台では、単独親権を廃止して共同親権に一本化する案は提示されていません。
共同親権を導入するとしても、あくまでも単独親権との「併用」となる見込みです。
したがって、既に離婚している父母の間では、基本的には単独親権を維持する取扱いがなされると考えられます。
ただし、共同親権が導入された場合には、現行法令でも認められている親権者変更調停・審判の手続きにより、単独親権を共同親権に変更することは認められるようになるでしょう。
参考:
親権者変更調停|裁判所
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_10/index.html
まとめ
今回はYahoo知恵袋!やツイッターなどでも話題の、最新版の日本の共同親権と法改正について、またメリット・デメリット、反対意見やなぜ進まないのか、既に離婚した場合はどうなるかなどを解説しました。
離婚後の共同親権が新たに導入されるか
離婚後の共同親権が新たに導入されるかどうかは、依然として法制審議会における議論の途上であり、現段階では不透明な状況です。
共同親権にはメリット・デメリットの両面があり、特に親権者間の意見対立を解決するのが難しい点や、DV・モラハラの被害から逃れにくくなる点などは、大きなデメリットとして懸念されます。
共同親権を導入する上での注意点
今後共同親権を導入するとしても、法制審議会および国会にて十分な議論を尽くしたうえで、共同親権が持つデメリットを解消し、メリットを最大限活かせるような制度設計を行うことが期待されるところです。