知っておくべき養育費の決め方

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子供を育てるためには、労力も費用も大変な負担が伴います。

あまり大きな声では言えないことかもしれませんが「養育費は1円でも多く貰いたい」と思うのが正直なところではないでしょうか。

離婚をする際には、養育費の意味と重要性をお互いよく理解した上で、納得がいくまで真剣に話し合うことが大切ですが、その中でも自分側にとって有利な条件で進めたいというのが正直な思いです。

しかし単に有利に話を進めたいという思いだけでは親としての自覚が薄くなりがちで、養育費を考える際には、あくまで「子供を中心」にして考えることをお忘れのないよう、お願い致します。

そこで今回は、養育費の基礎知識とその考え方、またよくある疑問(子供が何歳まで払うのか、いつまで支払いがあるのか、いくら支払うのか等)にお答えしたいと思います。

養育費というのはどういうもの?何が含まれるの?

そもそも「養育費」とは、自分の子供を養うために必要となる費用であることは多くの人はご存知かと思います。具体的には、

・日々の生活費
・学校などの教育費用
・病気になった際の医療費

などです。これらの費用は、家族なら当然負担するものですが、なぜ離婚しても、男性は養育費を負担し続けなければいけないのでしょうか?

「そんなのは当たり前のことではないか」とお感じになるかもしれませんが、養育費を決定する際に重要なことですので、まずはそこから確認していきましょう。

(※ちなみにこの記事では男性が養育費を支払うことを前提で解説しましたが、女性が養育費を支払うケースももちろんあります。こちらについてはまた別の記事で解説いたします。)

そもそも養育費は、法的に支払い義務があるの?

あまり知られていませんが実は、養育費については、以前は法律に明文化した規定はなかったのです。

そこで今までは個別に必要性を主張していましたが「平成23年(2011年)」に民法が改正され、次のような文言となりました。

「民法766条」父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。

ここで重要なキーワードは「分担」です。

結婚している間については、子供の成長のために夫婦は互いに協力しています。けれども離婚をするとなると、子供はどちらか一方の親に引き取られて育てられる事となります。

もしもこの養育費の分担義務がないとすると、子供を引き取った方の親だけに、過度な経済的負担を強いる事となり、場合によっては「子供の福祉にも重大な影響」が出てきます。

そこで法律は、離婚後も子供が以前と変わらず安定した生活が送れるよう、離婚後も一定の養育費を負担するよう規定したのです。

これはごくごく当たり前のことのようにも感じますが、この当たり前の「分担」という考えは、先程も申しました通り、養育費をいくら支払うかを考える際にとても重要になってきます。

養育費はいつまで払うの?いくら払うの?

未成年まで?成人後も支払うべきか

まず「期間」についてですが、法律では「いつまで」とはっきりと明記されていないのです。

一般的には子供が成人するまでの養育費を分担します。

ただ、子供が成人してから大学の入学金・学費や生活費などを分担するケースも多くあるため、必ずしも未成年の間だけに限定されるわけではありません。

あくまで離婚協議における話し合いで、お互い納得する形で決めるということとなります。

(※素朴な疑問として「子どもが高校を退学して、早い段階で社会人になった場合はどうなるの?大学に行かなかった場合はどうなるの?」という疑問があるかと思います。これにつきましてはまた別途記事で解説させていただきます)

いくら支払うかを考える時に、いちばん大切なこと

それでは離婚して子供と離れるほうの親は、いくらの養育費を負担すれば良いのでしょうか?

まず大前提として、重要な事は『今後子供をどのようにして成長させたいか』という親としての気持ちです。

離れて暮らす子供に十分な暮らしと十分な教育環境を提供したいと考えるならば、それなりに養育費の金額は高くなりますし、反対に、すべて公立の学校に通わせて、高校卒業後はすぐに就職させるような教育方針なのであれば、養育費の見積もりとしては安くなるでしょう。

忘れてはならないのは、養育費は「いくら」負担してください、というのが前提にあるのではなく、父親と母親で「分担」してください、ということなのです。

ですから、極端に言えば、子供が成人するまでに「1億円かけて教育したい」のであれば、離れて暮らす親は、最低でも5000万円以上は負担すべきという事なのです。

これは極端な例ですが、まずは、「養育費は分担するものである」ということを良く理解してください。

そうでないと、この後にお話する養育費の相場を誤解して捉えてしまうからです。

実は養育費には「相場」「平均」というものがあり計算することができます。家庭裁判所のホームページ(PDF)(スマホで閲覧の方はPDFビューアが必要になります)の算定表から閲覧する事ができるようになっています。

ここを見れば、年収400万円の方も1000万円の方も、およそ負担すべき養育費の金額の目安が分かるでしょう。

また日弁連が提言している新算定表も合わせてご確認ください(※後述致しますが、これはあくまで「目安」だということは注意してください。強制的に一律でこの金額にはなっているわけではありません。)

また新算定表はあくまで日弁連が公開しているだけのもので、調停での争いになった際など、家庭裁判所でこれを元に主張しても考慮してもらえないのが現状です。あくまで夫婦間で穏便に話し合いができる場合のみ参考にしてみるのが現在の活用方法として正しいと言えるでしょう。

■参考
家庭裁判所のホームページ(PDF)の算定表
日弁連の新算定表(PDF)

一括払いやまとめ払いはNG?

実は「いつまで」「いくら」以上に、「支払い方」で揉めることも多いです。

「夫が途中で逃げたり蒸発しそうだから一括請求したい」という方や、「妻のことを思い出したくないから、一括で全部支払って、すっきりしたい」という方も実は多いです。

養育費の一括払いやまとめ払いは、夫婦間で合意を得た場合はもちろん可能です。しかしデメリットはあります。

たとえば離婚後、妻が再婚して養育費を支払う必要がなくなるという場合もありますし、また子供の教育費が当初の予想より高額になって、養育費を追加で請求したり、期間の延長などもしたいという話になる場合も多いです。

要するに、離婚前にはまったく予想しなかったような状況になることは珍しくないのです。

そのため特別な事情がない限り、分割払いで支払うことをおすすめいたします。

ここまでが養育費を考える上で基本的な知識となります。このことを踏まえて、養育費が家庭の事情によってどのように変動していくかを次に解説していきます。

養育費算定のポイントとは?決め方

「○○さんの子供はたくさん養育費をもらっているのに、わたしの息子は全然もらっていない。。。」という状況が発生する理由は、次の要素に応じて養育費の金額が大きく変動する仕組みになっているからです。

・子供の人数
・子供の年齢
・親の年収
・親の職業

の4つです。一つずつ確認していきましょう。

1:子供の人数(2人、3人、4人・・・)

離婚する際に子供が何人いるのかによって、養育費の金額が変わってきます。ただし、子供の人数に応じて養育費が倍増するわけではなく、一定額が上昇するにとどまります。

生活の変化によって、養育費が足りなくなった場合は増額請求することも可能です。基本的には2人での話し合いになりますが、まとまらなかった場合は養育費増額調停を申し立てることができます(これについてはまた別途記事で解説させていただきます)

2:子供の年齢(何歳まで)

必要となる養育費の金額は、子供の年齢によって変動します。算定表では0歳~14歳未満と15歳~19歳のカテゴリに分けて養育費を算定しています。

15歳というとちょうど高校進学のあたりの年齢になり、食費や教育費などあらゆる生活費が増えることが見込まれるため、養育費の金額もかなり高くなるように設定されています。

たとえば父の年収500万、妻の年収が100万の場合で、子供の年齢が14歳以下なら「4~6万円」となりますが、15歳以上なら「6~8万円」が相場となります。この場合は約2万円アップするということになります。

3:親の年収(400、500・・1000万円etc)

養育費の算定に当たっては、両者の年収が大きく関わってきます。

義務者(子供を引き取って育てる方の親)の年収が高くなればなるほど養育費の金額は増額し、反対に権利者(養育費を支払う親)の年収が増えれば義務者の負担する養育費の金額は一定水準で落ち着く事になります。

なぜそうなるのでしょうか。

養育費の考え方として、両親が離婚をしても子供の暮らしが「離婚前と同じ水準で維持」できるようにする、という子供の福祉や利益を最優先に考えるという前提があります。

例えば、義務者が大富豪の父親で、権利者が専業主婦のケースで子供が母親に引き取られたとすると、父親が十分な養育費を負担してくれないと、子供が一気に貧乏暮らしとなってしまう恐れがあるのです。

そのため、年収をベースにして、子供が離婚後も従前と変わらぬ生活が送れるよう、十分な養育費を確保できる算定表が作成されているのです。

ここでの注意点は、夫が給料をごまかして正しい所得を教えない場合が考えられるということです。それについては「離婚と養育費の計算|夫の年収が分からない場合、年収を知る方法」の記事が詳しいのであわせてご参照頂ければと思います。また年を減るごとに夫の年収は上昇したり下降したりする場合もあります。

4:親の職業

見落とされがちですが、親の職業についても養育費に影響します。

といっても細かな職業別に決められているわけではなく、給与所得者か自営業者かで分けられています

家庭裁判所の算定表を見てみると「左の下端」に「給与」「自営」と記載されていることがわかります。

同じ条件だった場合、自営業者の方が支払う養育費の金額は高く算出されるようになっています。

【具体例で考えよう】

子供1人(10歳)
義務者(会社員)の年収1000万円
権利者の年収なし

この場合の養育費は、10~12万円とされています。

仮に義務者の年収が半分の500万円だった場合、養育費は4~6万円と所得に応じて養育費が変動するようになっています。

これにより、離婚後も子供の生活水準が極端に下がらないよう配慮しているのです。

しかし先程申しました通り、これは単に1例で、一律でこの金額になるとは必ずしも言えないのです。

【養育費算定表はあくまでも目安】

このように、養育費の算定表を使えばおよそ負担すべき養育費の金額は分かるでしょう。

ただし、これらはあくまで一つの目安であり、これに必ずしも拘束されるというわけではありません。

離婚時に両者で納得して合意していれば、いくらで取り決めても問題はありません。ただ、話し合いで解決できないような状況の場合は、この裁判所の算定基準に当て込んで解決する事になるというだけなのです。

ですから、子供の生活のためにいくらのお金が必要なのかは、この算定表にとらわれず、離婚前にしっかりと話し合って決めることがとても大切なのです。

養育費の支払い義務を免れることはできないの?

先ほども言ったように、養育費の分担は離婚したとしても父母である事実に変わりはないので、親として負担する義務があります。

法律は子供の福祉や利益を強く保護する傾向にあり、たとえ「親が自己破産をしたとしても」、養育費の負担義務までは消滅しないくらい、非常に重く重要な義務なのです。

失業してどうやっても払えないのですが、、、

支払う側が全くの無収入になったら、養育費はどうすれば良いのでしょうか。その答えは法律論で考えず単純に気持ちの問題で考えれば答えが出ます。

もしもまだ婚姻が継続していて、子供がいる状態で失業したとします。

あなたならどうしますか?

子供を育てるために、死にものぐるいで仕事を探して、なんとか食いつなげるよう努力するかと思います。いくら支払うか、いつまで支払うかといった悩みとは無関係なはずです。

離婚したからと言って、この気持ちが変わってしまっては困るのです。現実問題として、ない袖は触れませんから、失業して貯金もゼロなのであれば、所詮義務があったところで、支払いを強制する事はできないでしょう。

ですが、だからといってそれで「養育費の負担義務を免除された」ということではないのです。もしも失業したのであれば、死にものぐるいで努力するのが親として当然の務めなのです。

どうしても支払いが厳しい→養育費の減額請求

養育費の金額は、離婚する際に夫婦間で取り決めをしたら、原則としてその取り決めを守り続けなければなりません。

しかし先程も申しました通り義務者が失業したりすると、失業前の年収で算定している養育費は維持できなくなるでしょう。

そのような場合は、義務者から「養育費の減額請求」を申立てることができます。

そして再度家庭裁判所において再度話し合い、現在の収入に見合った養育費の額に下方修正してもらうことができるケースがあります。

養育費が減ると、権利者や子供にとってはマイナスですが、仮に婚姻を継続していたと仮定しても、義務者が失業していれば、それに伴って生活は多少質素になっていた運命だったはずです。

ですから、そのような場合については、家庭裁判所に養育費の減額請求を申立てる事になるでしょう。また年収と養育費のバランスが現状とあっておらず困っている方は「知っておきたい!養育費の減額と再婚に関する全知識」の記事が詳しいのでこちらも後ほどご参考ください。

以上のように、養育費は時間とともに変動していく生き物のようなところがあります。

つまり、争いやトラブルがよく起きてしまうため、これを回避するために、必ず離婚前にしておくべきことがあります。それは「離婚協議書」を作成するということです。

滞納回避するための、離婚協議書の書き方

養育費は、相手が信頼できるのであれば、口頭でも成立します。ただ、現実問題としては、離婚後相手に別の異性や家庭ができると、養育費の支払いが遅れがちになり滞納したり、さらには「もう養育費は払わない」等突然言い出す場合もあります

ですから、必ず離婚前に離婚協議書(りこんきょうぎしょ)という書類を作成しましょう。

たまに「誓約書を書いてもらう!」と意気込む方もいらっしゃいますが、誓約書は離婚協議書とは異なり一方的な要求だけを伝える書類です。

ですので基本は離婚協議書で書面化するようにしましょう。

なお、万が一離婚後養育費の滞納が発生した場合に、強制的に義務者から回収するために、必ず次のいずれかの方法によって養育費の取り決めをしましょう。

方法1:離婚協議書を「公正証書」で作成する

離婚協議書を公証役場で作成し、公正証書化してもらうことで、その書類には執行力がつきます。

万が一養育費を滞納した場合は、その公正証書を裁判所に持ち込んで手続をすることで、速やかに義務者の財産に強制執行がかかることになります。

具体的には、銀行口座や給与などを差し押さえて強制的に差し引くことになります。

公正証書についての詳しい説明は「なぜ離婚協議書は公正証書で書くべきか?その理由と内容」の記事も後ほど参考にしてみてください。

方法2:「調停離婚」を利用する

2つ目は家庭裁判所の離婚調停を利用する場合についてです。

調停時に作られる「調停調書」に養育費の分担金額まで明記してもらえば、万が一養育費の滞納が発生した時に、公正証書と同じ手続をとることができます。

どちらの手続も自分自身で行なう事ができますが、できれば弁護士などの専門家に依頼したほうが良いでしょう。

なお、もしもこれらの手続をとらず、単に離婚協議書だけ作成した場合で万が一養育費が滞納すると、いきなり強制執行をすることができず、まずは養育費支払い請求の裁判を起こし、勝訴判決をもらってからでなければ、義務者の財産に強制執行をかけられなくなってしまいます。

そのため、養育費については、必ず「公正証書」か「調停離婚」を利用するようにしましょう。

また離婚調停についての詳しい説明は「離婚調停で必ず踏まえておくべき知識。慰謝料や養育費はどう決めるか。」の記事も後ほど参考にしてみてください。

増額可能か?養育費を弁護士に相談するメリット

養育費の金額自体は、算定表を基準に計算すれば、誰にでも金額を割り出すことができます。

けれども、算定表の金額だけで十分とは言い切れません。例えば、将来私立の高校の学費が必要になったり、有名大学に行かせたかったり、海外留学させたいといった希望がある場合、これらも養育費に盛り込んで義務者と交渉しないと、現実的には権利者がなし崩し的に負担させられ、増額できません。

離婚や養育費に強い弁護士は、こういったご家庭ごとの事情に合った適切な養育費の算定に関するノウハウと、それを義務者に納得させられるだけの交渉力を併せ持っています。

養育費は、離婚する前に子供が成人するまでの資金計画を立てて、それを予め金額に落とし込んで相手に請求する必要があり、これを適当にしてしまうと、離婚後お金が足りなくなってしまい、再度話し合いの場を持たなければならなくなってしまうのです。

弁護士に相談すれば、弁護士があなたに代わって、適切な養育費を確保できるよう、相手方と直接交渉してくれるでしょう。

またすでに離婚して、夫が養育費を滞納している状況にいらっしゃる場合もあるかと思います。その方は「元夫の養育費未払いを徹底阻止!調停で強制執行・差し押さえまで」の記事もあわせてご確認ください。

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