離婚裁判の流れとは?申立てから判決・和解までをわかりやすく解説!
離婚裁判と聞くと、「難しそう」と不安に思う方も多いでのはないでしょうか。この記事では、離婚裁判の流れ・手続きを詳細に…[続きを読む]
夫婦間の問題や紛争を円満に解決する方法として、夫婦円満調停が注目されています。本記事では、夫婦円満調停の基本的な概念と手続きの流れについて詳しく解説します。また、調停に際して弁護士に依頼する際のメリットについても考察します。
夫婦円満調停は、離婚や財産分与、親権・養育費などの問題を当事者同士で協議し、第三者の調停員の指導のもとで解決を図る手続きです。裁判所外の公的機関で行われるため、通常は裁判手続きよりも迅速で費用も抑えられる利点があります。
夫婦円満調停の手続きは、以下のような流れで進行します。まず、調停申し立てを行い、調停員の指導の下で話し合いが行われます。合意が得られれば、その内容が調停調書にまとめられ、その後の手続きが進行します。
弁護士に依頼するメリットは多岐にわたります。弁護士は専門知識を有し、法的な観点からのアドバイスや交渉力を提供します。複雑な問題や感情的な対立がある場合でも、弁護士が仲介役として冷静な判断を下し、適切な解決策を見つける手助けをします。
夫婦円満調停は、関係修復や紛争解決の一助となる方法です。弁護士のアドバイスを受けつつ、お互いの意見を尊重し合い、円満な解決に向けて努力することが、長期的な幸福を追求するための大切なステップとなるでしょう。
目次
まず、夫婦円満調停とはどのようなものか、離婚調停との違いは何かという基本的な事項について解説します。
夫婦円満調停は、裁判所による呼称では「夫婦関係調整調停(円満)」といいます。
一般的には「円満調停」などと呼ばれることが多いです。
夫婦円満調停の目的は、こじれてしまった夫婦の関係を元の円満な関係に戻すことにあります。
夫婦円満調停では、裁判官や調停委員が夫婦の間に立ち、双方から話を聞きつつ、夫婦関係改善のための助言や解決案の提示を行います。
夫婦双方は、調停の場でそれぞれの言い分を提示しながら、今後の夫婦関係のあり方について話し合い、夫婦関係の改善を目指すことになります。
なお、夫婦円満調停は、離婚した方がいいかどうか迷っているという場合にも利用することができます。
まずは夫婦円満調停の場で話し合い、途中で離婚の意思が強くなった場合には、離婚調停に切り替えて離婚を争うことも可能です。
これに対して離婚調停は、裁判所の呼称では「夫婦関係調整調停(離婚)」と呼ばれています。
つまり、夫婦円満調停も離婚調停も、どちらも夫婦関係調整調停の一種であるという意味で共通しています。
しかし、両者はそもそも調停を行う目的の点で異なっています。
夫婦円満調停が夫婦関係の修復を行うことを目的としているのに対して、離婚調停は離婚そのものや離婚の条件を話し合うことを目的としています。
夫婦円満調停と離婚調停は、そもそも向いている方向が真逆の手続きであるといえるでしょう。
夫婦円満調停では、裁判所や調停委員による話し合いの仲介を受けることができます。
そのため、夫婦同士のみで話し合いを行う場合よりスムーズに進むことも少なくありません。
裁判所の手続きと聞くと身構えてしまうかもしれませんが、実際に話し合いとしては様々なメリットがあります。
夫婦関係が破綻しかかっている状況では、夫婦同士のみでの話し合いはどうしてもけんか腰になりがちです。
この点、夫婦円満調停では、第三者である裁判所や調停委員がクッションの役割を果たし、冷静な状態で腹を割った話し合いをすることができます。
特に、夫婦円満調停は家庭裁判所というやや格式ばった空間で行われるため、お互いに声を荒らげたりすることも少なく、落ち着いた話し合いができることが期待されます。
また、裁判官や調停委員は、夫婦のどちらとも利害関係を持たない公平な第三者です。
たとえば、お互いの親族や友人に夫婦の話し合いを仲介してもらおうとしても、どうしてもどちらか一方を贔屓(ひいき)するというようなことが発生しがちです。
しかし、夫婦円満調停では、裁判官・調停委員という完全な第三者の仲介により、夫婦にとって互いに公平な話し合いを行うことができます。
さらに、裁判官や調停委員には、さまざまな夫婦の離婚問題を目の当たりにしてきた経験があります。
その経験を生かして、裁判官や調停委員は、夫婦関係の原因や問題点、解決策を客観的な視点から分析・検討してくれます。
当事者の夫婦としても、客観的な第三者が提示した解決策だからこそ、素直に受け入れて同意できるという場合もあるでしょう。
このように、夫婦円満調停では裁判官や調停委員の客観的な意見が聞けることによって、夫婦間の問題解決が促進される可能性が高くなるといえます。
実際に夫婦円満調停を申し立てる際の手続きについて解説します。
申立書の書式・記載例についても紹介しますので、参考にしてください。
夫婦円満調停は、夫婦のどちらからでも申し立てることができます。
申立先は、原則として相手方の住所地の家庭裁判所となります(家事事件手続法245条1項)。
夫婦が同居している場合にはあまり問題になりませんが、別居している場合には、申し立てる側は遠方の家庭裁判所に申し立てなければならないことがあるので注意が必要です。
なお、夫婦双方の合意があれば、合意によって指定する家庭裁判所に申立てを行うことも可能です。
申立てに必要な費用は、以下のとおりです。
<夫婦円満調停の申立てに必要な費用>
・収入印紙1200円分
・連絡用の郵便切手(家庭裁判所に金額を確認)
また、申立てに必要となる書類は以下のとおりです(なお、家庭裁判所により追加書類の提出を求められることがあります。)。
<夫婦円満調停申立ての必要書類>
・申立書およびその写し1通
(なお、この他に自分用の写しをさらにもう1通取っておくとよいでしょう)
・夫婦の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)
夫婦円満調停の申立書の記載例は、裁判所のホームページで紹介されています。
【参考】裁判所HP:夫婦円満調停申立書 記載例
2ページ目の申立ての趣旨の欄で「申立人と相手方の婚姻関係を円満に調整する」という項目に丸を付け、その他の必要事項を記入するようにしましょう。
実際に夫婦円満調停を申し立てた場合に、どのような流れで手続きが進むかについて見ていきましょう。
夫婦円満調停の手続きの流れを順番に解説します。
夫婦円満調停の申立てを行うと、その後2週間程度が経った段階で、家庭裁判所から調停期日の連絡が入ります。
家庭裁判所に指定された調停期日に、夫婦双方が出席して夫婦円満調停が行われます。
調停期日では、夫婦が別々に調停室に呼ばれ、それぞれ30分間程度、調停委員からの質問に答えることになります。
調停員から質問される内容の例としては、以下のようなものが挙げられます。
調停委員に話したことを相手には伝えてほしくないという場合には、その旨を調停委員に伝えれば尊重されます。
逆に、相手に伝えてほしいことがあれば、調停委員を通じて伝えてもらうようにお願いするといいでしょう。
このように、間に調停委員を挟みながら夫婦双方の希望や意見のすり合わせを行い、調停案への合意を目指します。
調停期日において調停案の合意に到達せず、さらに話し合いが必要と判断された場合には、2回目以降の調停期日が指定されます。
以降、同じように調停委員に仲介してもらいながら、夫婦双方の話し合いを進めていくことになります。
裁判官の提示する調停案に夫婦双方が同意した場合には、夫婦円満調停は成立します。
この場合、夫婦双方は成立した調停の内容にしたがって、その後の夫婦関係を営んでいくことが期待されます。
一方、夫婦の話し合いがつかずに調停案に合意することが不可能となった場合、夫婦円満調停は不成立となって終了します。
夫婦円満調停が不成立に終わった場合のその後の流れについては、次の項目で解説します。
特に夫婦で話し合いを持つ機会がないままに夫婦円満調停を申し立てた場合、相手が欠席してしまうことがあるかもしれません。
1回目の調停期日の欠席であれば、調停委員が申立人の言い分だけを聞いたうえで、改めて調停期日が指定されることになります。
しかし、欠席が繰り返される可能性が高い場合には、せっかく夫婦円満調停を開催しても、話し合いが全くできないことになります。
このような場合には、夫婦円満調停を続けたとしても、裁判官や調停委員、申立人のすべてにとって時間の無駄です。
よってこの場合、夫婦円満調停は不成立となるか、取下げを促されて終了します。
夫婦の関係を改善するためには、ぜひともお互いが納得したうえで、夫婦円満調停を成立させたいところでしょう。
夫婦円満調停を成立させるためには、どのようなポイントに注意すればよいのでしょうか。
また、万が一夫婦円満調停が不成立に終わってしまった場合、その後どのような流れをたどるのでしょうか。
以下ではこれらのポイントについて解説します。
夫婦円満調停を成立させるためには、調停手続きを協力的に進めつつ、相手の言い分も理解し、互いに歩み寄りをみせることが重要になります。
とはいえ、ぎくしゃくした夫婦関係の中では、どのようにすれば互いに歩み寄れるのかわからないという場合もあるでしょう。
そのような場合には、以下の点に注意してみましょう。
調停委員は、夫婦関係の改善に向けた調整を真摯に行ってくれます。
夫婦の側もそれに応えて、調停委員の質問に対して誠実・協力的に回答しましょう。
調停委員の側で夫婦の事情をよく理解することができれば、話し合いの仲介をスムーズに行うことができるので、調停成立の可能性が大きく高まります。
また、離婚をしたくないという希望がある場合に、調停委員に対して良い印象を与えることができれば、相手を説得して離婚を思いとどまらせてくれるかもしれません。
逆に、調停委員に対して非常識な言動をしたり、感情的な発言をしたりすることは慎みましょう。
夫婦関係を改善するためには、離婚問題に詳しい弁護士に相談することも有効です。
離婚問題に詳しい弁護士は、夫婦間で揉めそうなポイントや、その妥協点などについてのアイデアを豊富に持っています。
専門的な経験に基づいた客観的なアドバイスを受けることにより、どこまでなら譲歩してよいかということのイメージを持つことができるかもしれません。
また弁護士に相談をすれば、夫婦円満調停の申立て書類の記載方法についても併せて相談できるというメリットもあります。
もし相手が取り付く島もない状態であったとしても、こちらから夫婦関係を真剣に改善するつもりがあることをアピールすれば、相手も折れて交渉に応じてくれるかもしれません。
夫婦関係も結局は人間関係の問題ですので、最終的には誠意をもって話し合いができるかどうかが大きなポイントになるのではないでしょうか。
夫婦円満調停が不成立に終わってしまった場合にも、それだけで何か夫婦の関係に直接的な変化が生じるというわけではありません。
しかし、夫婦円満調停を行ったことをきっかけとして、夫婦の関係は新たな段階へと進むことになるでしょう。
夫婦円満調停が不成立に終わった後のパターンについて解説します。
夫婦円満調停をきっかけとしてお互いの考えを知り、自然と夫婦の関係性を見直して再出発できる場合もあります。
この場合は、そのまま夫婦の生活を続けていけばよいでしょう。
夫婦生活においては、調停委員からの助言があればそれを実践しつつ、お互いを尊重することが大切です。
夫婦の関係がぎくしゃくしたままである場合には、再度夫婦円満調停を申し立てることも考えられます。
また、関係が悪化してしまった場合には離婚調停となる場合もあるでしょう。
いずれにしても、夫婦の関係性についてじっくり考える時間を持つため、再度の調停を申し立てるのは1回目の調停が終わってからある程度時間が経ってからの方がよいでしょう。
夫婦の断絶が決定的な場合は、離婚裁判で離婚を争うことも仕方ないでしょう。
夫婦円満調停が不成立に終わったことにより、調停前置(家事事件手続法257条1項)の要件を満たすので、そのまま離婚裁判を提起することが可能です。
ただし、相手が離婚に反対している場合には、法定離婚事由(民法770条1項各号)が存在しなければ離婚が認められない点に注意しましょう。
夫婦円満調停は、夫婦関係の修復を目的とした話し合いの場所です。
もし夫婦の関係性がうまくいっていないという場合には、夫婦円満調停を選択肢の一つとして検討してみてください。
夫婦円満調停の申し立て方や留意点などについては、お気軽に弁護士へご相談ください。