離婚裁判の流れとは?申立てから判決・和解勧告までをわかりやすく解説!

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夫婦が離婚を検討する際、最初は協議や調停を通じて離婚条件を合意することを目指します。しかし、時には合意に達せず、離婚裁判による争いという展開に至ることもあります。

離婚裁判の手続きや進行に関する情報は、多くの人にとって未知の領域かもしれません。

ここでは、訴訟、離婚裁判の進行や手続きについて詳しく説明します。それぞれの段階で行われる手続きについて理解することで、離婚裁判に向けての準備や考え方を整える助けとなるでしょう。ぜひ、この記事を参考にしてみてください。

離婚訴訟・裁判とは?

まずは、離婚訴訟・裁判とはどのようなものかについて、基本的な事項を解説します。

離婚裁判とは?

離婚裁判は、文字通り離婚に関する手続きが行われる裁判を指します。

離婚についての主張や、離婚に関する様々な条件について夫婦双方が主張を述べ、最終的に裁判所による判断が下されます。

離婚裁判では、夫婦間での主張に異論がない場合でも、条件面での争いが生じることがあります。

争われる可能性のある離婚条件としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 親権
  • 財産分与
  • 養育費
  • 年金分割
  • 慰謝料

離婚裁判に先立って離婚調停を申し立てることが必要

離婚について夫婦で揉めてしまっている場合であっても、原則としていきなり離婚裁判はできないことになっています。
(例外的に、裁判所が離婚調停を行うのは相当でないと判断した場合は離婚裁判から始めることができます。)

離婚等の人事に関する訴訟事件やその他一部の家庭に関する事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければならないのです(家事事件手続法257条1項)。

これは、家庭の問題についてはいきなり公の裁判の場で争うのではなく、まずは当事者同士の話し合いで解決すべきという価値判断が背景にあるものと考えられています。

離婚については同法に基づく調停事項とされているため、原則として、まずは離婚裁判を起こす前に、離婚調停の申立てを行う必要があります。
そして、離婚調停が不成立になると、離婚裁判を起こすことができるようになるのです(調停取り下げの場合でも離婚裁判が可能な場合もあります)。

裁判上の離婚には、法定の離婚原因の存在が必要

離婚裁判において離婚そのものが争われる場合、法定の離婚原因が存在するかどうかが判断のポイントになります。

法定の離婚原因は、民法770条1項各号に列挙されています。

具体的な内容は、以下のとおりです。

  1. 配偶者に不貞行為があったとき
  2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき
  3. 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
  4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
  5. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

これらの法定の離婚原因が一つも存在しない場合には、離婚の訴えは棄却されてしまいます。
そのため、離婚裁判を提起するときは、弁護士とともに事前に法定の離婚原因が存在するかどうかを検討しましょう。

なお、条文上、上記1から4(5は除く)の法定の離婚原因がある場合でも、裁判所が事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる(同条2項)とされています。
ただし、現在の裁判実務では4(強度の精神病)の場合を除き、1~3のいずれかに該当する場合で離婚請求が棄却されることは殆どないと言われています。

離婚裁判の流れ①|離婚裁判が開始されるまでの手続きについて

それでは、具体的な離婚裁判の流れについて見ていきましょう。

まずは、離婚裁判が開始されるまでの準備段階の手続きについて、詳しく解説します。

まずは家庭裁判所に訴えの提起

離婚裁判は、まず夫婦の一方が家庭裁判所に対して訴えを提起するところからスタートします。

離婚裁判の管轄裁判所は、夫婦のどちらかの住所地を管轄する家庭裁判所となりますので(人事訴訟法4条1項、2条1号)、管轄のある家庭裁判所に訴えを提起することになります。

家庭裁判所に訴えを提起する際の必要書類は、以下のとおりです。

  • 訴状2部
  • 夫婦の戸籍謄本およびそのコピー
  • 「年金分割のための情報通知書」およびそのコピー(年金分割における按分割合に関する処分の申立てをする場合。年金事務所や各共済年金制度の窓口で取得することができます。)
  • その他、源泉徴収票や預金通帳などの証拠とする書類のコピー2部

訴状の書式と記入例については、裁判所のホームページに掲載されている以下の資料を参照してください。
訴訟の書式(裁判所HP)
訴状の記入例(裁判所HP)

訴えを提起する際に必要となる費用には、収入印紙代郵便切手代があります。

これらの費用の金額は請求の内容によって異なるため、訴状の提出先となる家庭裁判所に事前に確認しておくとよいでしょう。

第一回口頭弁論期日の指定・通知

口頭弁論期日とは、実際に夫婦双方ないしはその代理人が裁判所に出頭して、法廷の場で陳述することによりそれぞれの主張を展開する期日をいいます。
ただ、陳述といっても口頭ですべてやり取りをするわけではなく、基本的には訴状や答弁書といった書面を提出することで陳述したことにしています。

家庭裁判所において訴状が受理されると、家庭裁判所によって第一回口頭弁論期日が指定されます
原告が家庭裁判所に訴状を提出してから約1ヶ月程度後の日付が指定されることが多いようです。

指定された期日は、夫婦双方に対して送付される呼び出し状により通知されます。

被告からの答弁書の提出

原告である夫婦の一方が家庭裁判所に提出した訴状は、家庭裁判所からもう一方の被告に対して送達されます。

訴状を受け取った被告は、指定された期日までに答弁書を作成し、裁判所と原告又はその代理人に対して送付する必要があります。

答弁書には、被告としての言い分を記載することになります。

答弁書の書式と記入例については、裁判所のホームページに掲載されている以下の資料を参照してください。
答弁書の書式(裁判所HP)
答弁書の記入例(裁判所HP)

離婚裁判の流れ②|裁判開始後から判決確定まで

次に、実際に離婚裁判が始まってから、判決が確定するまでの詳しい流れについて見ていきましょう。

第一回口頭弁論

家庭裁判所が事前に指定した第一回口頭弁論期日において、夫婦双方の出席の下、第一回口頭弁論が行われます(代理人がいる場合は、通常代理人のみが出席します)。

ただし、実務上第1回口頭弁論は原告側のみが出席することが多いです。被告側は答弁書を提出しておけば、必ずしも第1回口頭弁論に出席する必要はありません

なお、口頭弁論の手続きでは、裁判官の訴訟指揮の下で、夫婦の双方がそれぞれの主張と証拠を提出し合うことになります。

その上で、裁判官は争点・証拠の整理や証拠調べを行い、実際に離婚事由があったかどうか、離婚の条件としてはどのあたりが妥当かなどについて判断を行います。

第二回以降の口頭弁論・尋問

口頭弁論の手続きは、おおむね1ヶ月~1ヶ月半程度に1回のペースで行われます。

口頭弁論では、書面にて主張立証を尽くし、争点が形成された後に、当事者本人尋問(場合によっては、証人尋問)の手続が行われます。

事件の複雑性や証拠の内容などにもよりますが、短くても半年、長引けば2年程度の期間を要します。

口頭弁論においては、自らの主張を立証するための証拠を裁判所に対して提出する必要があります。

たとえば離婚そのものを争っている場合に、離婚を主張する側としては以下のような証拠を提出することが、離婚を認めてもらうために有効といえるでしょう。

  • 不貞行為を証明する証拠
    (例)不倫相手と一緒にホテルに入る写真
  • 婚姻関係の破綻を証明する証拠
    (例)暴力を証明する診断書や暴言を裏付けるメール、別居期間を証明する書類(住民票など)

また、財産分与を請求する場合には、相手がどのような財産を所有しているかを証明する書類を提出しましょう。

たとえば預金通帳や、不動産を所有している場合には不動産登記簿謄本、不動産の査定書を提出することが考えられます。

なお、相手方の財産状況が不明な場合も多いので、その場合は、判明している範囲で資料を提出し、基本的には裁判所より、相手方に対して開示を指示してもらうということになります。

早期解決のため、和解を勧められる場合がある

離婚裁判を進めていく中で、裁判官は夫婦双方に対して、何度か和解の提案をする機会があります。

和解は夫婦双方が譲歩し、合意により解決に至るため、判決で一刀両断に解決策を提示するよりも柔軟で円満な解決が期待できます
また、裁判所にとっても判決文を作成しなくていいため、手続きの簡略化・早期解決というメリットがあります。

このような理由から、裁判官は裁判をすすめる中でタイミングを窺い、夫婦双方に対して和解勧告をしてくることが多いです。
裁判所からの和解勧告に基づいて、夫婦双方が合意に至れば、判決を待たずに裁判は終了となります。

なお、和解であっても確定判決と同じ効力を有する「和解調書」というものが作成されます。

判決とその確定

和解の成立が困難と裁判官が判断した場合には、裁判官により判決が下されます。

もし判決の内容に不服がある場合には、判決文が送達された日の翌日から起算して2週間以内に、上級裁判所に対して控訴をする必要があります。

夫婦のどちらからも控訴がされなかった場合には、判決は確定します。

控訴した場合・決着つかない場合

離婚裁判で当事者双方が納得のいく判決が下されない場合、控訴する権利があります。しかし、控訴すれば一審の結果を覆すだけの新たな証拠や主張が必要となり、さらに裁判が長期化することになります。

場合によっては、控訴審でも決着がつかずとなると、この場合、最終的な離婚確定までに数年を要することもざらにあります。長期化すればするほど、当事者の精神的・経済的負担は重くのしかかってきます。

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判決後の流れ|控訴期間終了後

離婚裁判で離婚を認める判決が確定した場合、その時点で離婚が成立します。

離婚届提出

判決後の流れとしては、判決確定の日から10日以内に、訴えを提起した原告が夫婦の住所地の市区町村役場で離婚の届出をする必要があります。

離婚の届出に必要となる書類は、以下のとおりです。

  • 離婚届(証人欄の記入や被告の署名押印は不要)
  • 戸籍謄本(本籍地以外の市区町村に届け出る場合)
  • 判決書の謄本
  • 判決確定証明書(裁判所に申請を行い発行を受ける)
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支払いをする・してもらう

また離婚そのもの以外に、財産分与・慰謝料・婚姻費用の支払いなどの条件についても判決の内容に含まれている場合には、その内容に従って支払いが行われる必要があります。

もし支払い義務がある側が自発的に支払いを行わない場合には、確定判決の正本を債務名義として「強制執行の手続き」をとることが可能です。

まとめ

離婚裁判は長丁場の消耗戦になりがちであり、準備にたいへんな手間がかかります。

また、裁判は専門的な手続きであるため、法律の専門知識に基づいて準備をすることが不可欠になります。

もし離婚の話し合いがこじれてしまい、離婚裁判に発展しそうだという場合には、速やかに弁護士にご相談ください。

離婚裁判を有利に進めるためには、弁護士に依頼することが非常に有効です。弁護士は、離婚裁判において依頼者に有利な和解や判決が得られるように、必要な主張や証拠を整理・準備してくれます。

また、面倒な裁判の手続きを依頼者の代わりに行ってくれるため、依頼者の時間的・精神的な負担も軽減されます。実際に、離婚訴訟手続きについて弁護士に依頼せずに行われるケースは稀であり、裁判所からも弁護士に依頼することを勧められることが多いのが現状です。

このように、ご自身で対応するより弁護士に依頼した方が、負担が軽減されるのは間違いありませんが、とはいえ、裁判手続き自体が大変なものであることに変わりありません。

この点を考えれば、やはり、離婚については、裁判になる前に話し合いや調停段階で早期に解決するのが望ましいです。
そのため、話し合いが行き詰ってしまったときなどは、話し合いの段階で早期に弁護士に依頼し、できるだけ話し合いでの解決を目指すことをお勧めします。

離婚問題にお悩みの方は、ぜひお気軽に弁護士へご相談ください。

離婚に強い弁護士が法的に解決いたします

離婚問題でお困りの方は、離婚に強い弁護士にご相談ください。慰謝料、財産分与、親権など離婚を有利に進めることができる可能性があります。

弁護士に相談することで、以下のような問題の解決が望めます。

  1. 慰謝料がもらえない
  2. 財産分与が妥当でない
  3. 親権がとられそう
  4. 養育費が納得いかない

離婚に強い弁護士に相談・依頼することで、相手との交渉を有利にすすめ、難しい手続きもサポートしてもらえます。

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