DVで慰謝料請求|時効や計算方法、証拠などについて

DV(家庭内暴力)の被害者として、慰謝料を請求することは、過去の苦痛や心の傷を癒し、新たなスタートを切るための重要なステップです。この記事では、DV被害者が慰謝料を請求する際の要点について詳しく解説します。
DVの慰謝料請求に関わる重要な要素は、まず時効の問題です。慰謝料の請求には一定の期限があり、その期限を過ぎると請求ができなくなることがあります。また、慰謝料の計算方法も慎重に考える必要があります。被害者が受けた身体的・精神的な苦痛、治療費や労働損失などを考慮して、適切な金額を求めることが大切です。
さらに、慰謝料請求の際には証拠が重要です。DVの証拠を集めることで、被害者の主張が裏付けられ、請求が有効になる可能性が高まります。写真、医療証明書、証人の証言など、多角的に証拠を揃えることがポイントです。
DV被害者が慰謝料を請求する過程は、心の癒しとともに法的な手続きを理解し、適切なサポートを受けることが重要です。この記事では、DVの慰謝料請求における重要な情報を包括的に提供し、被害者が公正な裁判を受けるための一歩を踏み出す手助けとなることを目指しています。
目次
DVとは?|基準と具体例
DVとは、ドメスティック・バイオレンス(domestic violence)の略称です。
明確な定義はありせんが、基本的に恋人や配偶者といった「親密な関係にある者からの暴力」という意味合いで使われています。
また、DVは以下のように4つに分類することができます。
- 肉体的暴力…蹴る・殴る・突き飛ばす・物を投げる・首を締めるといった行為
- 精神的暴力…暴言を吐く・人の前で貶す・物を投げるフリをする・無視する・軟禁するといった行為
- 経済的暴力…家計費を渡さない・自分の給料を全部使われる・仕事を禁止するといった行為
- 性的暴力…性行為を強要する・性的な本などを見せてくる・避妊に協力しないといった行為
DVはその軽重や程度によって決まるわけではありません。
暴力を受けた人が精神的・肉体的苦痛を感じたならばDVになります。
そのため、いくら軽い行為であったとしてもDVになる可能性があるのです。
DVと慰謝料請求|時効や相場について
慰謝料の時効
DVを受けた場合、もちろん離婚時に慰謝料を請求することができます。
しかし、離婚してから3年が時効となっていますので、その期間内に請求するようにしてください。
慰謝料の相場
慰謝料の金額はケースバイケースであるため、一律に決まっているわけではありません。
ただ、おおよその相場としては50~300万円と言われています。
また、慰謝料は当事者の合意によって決めるため、相手が認めればいくらでも請求することができます。
後遺症など、DVによって何かしらの影響が残ってしまった場合には金額が大きくなる可能性もあります。
慰謝料を考える基準
相場といっても間に250万円の差があり、結局いくらにすればいいのかわからないですよね。
DVの慰謝料を決める際には、いくつか計算の基準があります。
以下のポイントを判断材料にしてみてください。
DVの頻度 | 回数が多いほど慰謝料が高くなる |
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DVの期間 | 長いほど慰謝料が高くなる、婚姻期間が長いことが関係することも |
DVによる被害 | ケガ・障害・後遺症・精神的な病気など、被害をどの程度受けたか 被害が大きいほど慰謝料は高くなる |
子供の有無 | 子供がいれば養育費等で支払うお金は多くなる 子供も被害にあっていれば、その分慰謝料も高くなる |
被害者の落ち度 | 被害者が不倫や挑発をしていたなど、何か落ち度がなかったか 落ち度があると慰謝料の金額が下がる |
上記のように、基本的に被害の範囲が広ければ広いほど慰謝料の額が大きくなります。
ただし、最後の被害者の落ち度に関しては、落ち度が大きいほど慰謝料が少なくなる可能性がありますので注意してください。
DVを理由に離婚したい|やるべきこととは?
それでは最後に、DVによって離婚したいときにするべきことについてご紹介していきます。
証拠を集める
特に離婚裁判になった場合は、DVが本当にあったのかどうか証拠が重要となります。
そのため、事前に証拠を残しておきましょう。
証拠にできる可能性があるものは、以下の通りです。
- DV中の録音、録画
- DVで生じた怪我の写真
- DVについて記した日記、メモ
- 相談した家族や友人などの証言、録音
- DVの怪我を医者に見てもらったときの診断書
- 警察や行政などにDVを相談したときの履歴
など
ただし、証拠を集めるとき、加害者にバレるとDVが悪化して証拠も捨てられてしまう可能性があるので注意が必要です。
なるべくバレないように行うようにしてください。
退避場所を確保する
離婚話を切り出したとき、相手が怒ってDVが激化するケースがあります。
そのときには、まず身の安全を確保することが最優先です。
実家や行政が用意する保護シェルターなど、安心できるような逃げ場所(別居する場所)をあらかじめ用意しておきましょう。
また、このときに生活費や子どもの預け先など、他に用意しておくべき点も一緒に考えておくことをお勧めします。
仲介人を準備する
DVが原因であるにかかわらず、離婚話というものは当事者同士では冷静に話し合えないケースが多いです。
そこで、共通の友人や弁護士など、第三者を介したり立ち会ってもらった状態で話し合いを行うことも検討してください。
また、話し合いをする前に、弁護士や公的機関(行政など)の相談窓口でどのように離婚を切り出せばいいのかアドバイスをもらうのもいいでしょう。
保護命令を利用する
日本では、配偶者からの暴力の防止と被害者の保護を目的として「DV防止法」が定められています。
この法律によって、DVで生命・身体に重大な危害を受けるおそれが大きい場合には、裁判所が「保護命令」を出すことができます。
保護命令の内容は、以下の通りです。
①接近禁止命令 | 6ヶ月間、被害者に付きまとったり住所や勤務先の近くを徘徊したりすることを禁止する |
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②電話等禁止命令 | 6ヶ月間、加害者が被害者にメールや電話をしたり、面会を要求したりするなどの迷惑行為を禁止する |
③子への接近禁止命令 | 6ヶ月間、子供の近くや住居・学校付近をうろつくことを禁止する(未成年の子が対象、成年は④に該当。また、15歳以上の場合は同意がある場合のみ) |
④親族等への接近禁止命令 | 6ヶ月間、被害者の親族の身辺や住居・勤務先付近をうろつくことを禁止する(同意がある場合のみ) |
⑤退去命令 | まだ同居している場合に、被害者が引っ越しをする準備などのために加害者に対して2ヶ月間家から出ていくことを命じる(家付近を徘徊することも禁止) |
これらの命令に違反した場合、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が科せられます。
もし相手からのDVが深刻な状態である場合には、この保護命令を活用して離婚の準備を進めるのも1つの手です。
ただ、保護命令を申立てるためには配偶者暴力相談支援センターや警察署に相談に行くか、公証人役場で宣誓供述書を作成する必要があるので注意してください。
【参考】裁判所:DV防止法 配偶者暴力等に関する保護命令申立て
まとめ
以上が、DVによる離婚についての解説でした。
DVを受けている被害者の中には、少し他人に流されやすい部分があったり、自責思考が強かったりとなかなか離婚を言い出せない人もいるかもしれません。
しかし、自分を傷つけてくる配偶者とわざわざ一緒にいる必要はなく、少しでも辛い・おかしいと感じたら離婚を検討することをお勧めします。
また、DV防止法のように被害者の安全を確保するための制度も用意されています。
もし悩んでいるのであれば、弁護士や配偶者暴力相談支援センターなど、専門家に一度相談してみてはいかがでしょうか。