婚姻費用の審判結果に納得がいかない!即時抗告について弁護士が解説

  • 別居中の夫に対して婚姻費用を請求するのに調停を申し立てたけど、夫が応じなかったので審判になった!
  • 裁判所が出した審判に納得がいかない!

このような場合、どうすることができるでしょうか。

今回は、婚姻費用の審判結果が納得できない場合に申し立てる即時抗告という手続、棄却されるか、答弁書はどうなのか、審判の内容を不服申立てして内容が覆る可能性があるのか、成功するのか、期間はどれくらいか、について解説します。

1 婚姻費用とは何か

婚姻費用とは、夫婦と未成熟の子供の生活を行っていくうえで必要となる生活費用の一切のことを指します。

婚姻費用の支払いが問題となるのは一般的に、夫婦が別居しているケースです。

収入がないあるいは少ない夫婦の一方が、収入が多い他方に対して請求するという形で、婚姻費用が問題となります。

以下のツールで、まず相場をご確認ください。

2 婚姻費用の取決め方の流れ

婚姻費用を相手方が支払おうとしない場合や相手方から提示された金額に不満がある場合、まず裁判所に婚姻費用分担請求調停を申し立てます。

  • 調停では、調停委員の仲介のもとで、当事者が協議
  • 協議が整わない場合には、調停不成立となります。
  • 調停不成立となった場合には、手続は審判に移行。
  • 裁判所が、調停時に提出された資料や、その後追加された主張や資料に基づいて判断を下します。

その判断に不服がある場合に申し立てるのが、即時抗告となります。

3 即時抗告とはどんなものか?

3-1 即時抗告の手続の流れ

即時抗告の申立と抗告理由書の提出

即時抗告は、審判に不服のある当事者が、審判の告知を受けてから2週間以内に申し立てる必要があります。

審判を下した裁判所(この場合は家庭裁判所になります。原裁判所といいます)に対して、抗告状を提出することによって申し立てを行います。

抗告状に抗告理由(審判について変更や取り消しを求める理由)を記載しない場合には、改めて、抗告理由書を提出しなければなりません。

抗告理由書の提出期限は即時抗告を提起してから2週間以内となっています。

即時抗告後の手続①審理が開始されるまで・棄却されるか

即時抗告がなされると、原裁判所から、高等裁判所(抗告裁判所といいます)に事件が送付されます。原裁判所は事件送付に当たり、抗告事件について意見を付すこととなっています。

抗告裁判所は、即時抗告が不適法である場合や、即時抗告に理由がないことが明らかである場合には、相手方当事者に抗告状の写しを送付しないで、抗告を却下(抗告が不適法な場合)又は棄却(抗告が不適法ではないが理由がない場合)することができます。

即時抗告が適法であり、かつ理由がないことが明らかとはいえない場合、抗告裁判所は、抗告状の写しを相手方当事者に送付します(なお、抗告理由書については、抗告をした当事者が自ら、裁判所に正本、相手方当事者に副本を送付することができます)。

即時抗告後の手続②決定が出るまで・答弁書について

その後、抗告裁判所は、審理終結日と決定日を定めます。相手方当事者は審理終結日までに反論があれば答弁書と証拠資料を提出し、抗告した当事者は再反論があれば、やはり審理終結日までに書面や証拠資料を追加して提出することになります。

つまり、相手方当事者は反論が必要ないと思えば答弁書を提出する必要がありません。

抗告裁判所は、原裁判所における審理を基礎としながら、新たに提出された当事者の主張や資料を検討して決定を下すこととなります。

なお、直接当事者の意見を聞く機会(審問といいます)を設けるかどうかは、事件の内容に応じて裁判官が決めるため、常に行われるとは限りません。

3-2 即時抗告の結論が出るまでは審理期間はどれくらいか

一般的には、即時抗告を申し立ててから審理が終結するまではおおよそ2か月ほど、結論(決定)が出るまでは審理終結からおおよそ1か月ほどかかるので、トータルで3か月ほどの期間が必要となります。

ただし、事件に特殊な問題や複雑な問題がある場合には、もう少し長い期間がかかる可能性もあります。

3-3 即時抗告で結果は覆る・成功する可能性はあるか?

即時抗告で審判の結果が覆る・成功する可能性があるかどうか気になる方がいらっしゃることでしょう。

即時抗告で覆ることはあり得ますが、即時抗告を申し立てた当事者に有利に覆るとは限らず、この場合、成功とはみなされません。

訴訟における不服申立てである控訴や上告には、「不利益変更の原則」があり、不服を申し立てた当事者にとって不利に原判決の内容を変更することはできないとされています。

例えば、400万円の損害賠償請求訴訟において、一審で200万円の損害賠償を認めたのに対して原告が控訴した場合、控訴裁判所は、200万円未満に減額する判決を言い渡すことはできないのです(ただし、被告も控訴をしている場合には、200万円未満に減額されることがあり得ます)。

ところが、審判には「不利益変更禁止の原則」の適用がありません。そのため、当事者の一方しか即時抗告をしていない場合でも、審判内容が抗告を申し立てた当事者に「不利に変更」される場合がありうるのです。

例えば、月5万円の婚姻費用を支払うことを相手方に命じる審判に対して、申立人が即時抗告を申し立てた場合、月5万円を超える金額を支払うよう命じる決定が下される可能性もありますが、逆に月5万円未満に減額する決定が下されるリスクもあるのです。

そのため、即時抗告を申し立てるかどうかは、審判理由をよく読んで、即時抗告を申し立てることによりかえって減額されるリスクがどの程度あるかをよく検討したうえで、成功する可能性があるかどうか検討して、決めなければなりません。

3-4 即時抗告の決定に不服がある場合はどうすればよいか?

即時抗告の決定に不服がある場合は、特別抗告の提起及び抗告許可の申立ができるとされています。

特別抗告は即時抗告の決定に憲法違反があること、抗告許可は決定が最高裁判例に違反していることを理由とする必要があります。

そのため、特別抗告や抗告許可申立をすることのハードルはとても高いといわざるを得ません。

また、特別抗告や抗告許可申立をしても、即時抗告の決定の確定を遮断することはできません。

したがって、即時抗告の決定に不服があっても、よほどのことがない限り、特別抗告や許可抗告申立をすることは困難ですし、その効果にも限界があるといわざるを得ません。

4 最後に

婚姻費用の審判結果に不服がある場合に即時抗告を申し立てることはできるものの、結論が出るまでにある程度の時間がかかり、かつ審判結果よりマイナスになるリスクがあることがお分かりいただけたと思います。

婚姻費用について相手方と調整がつかない場合に、どのような手続を採るべきかについては、ぜひ弁護士に相談してください。

離婚や男女問題に詳しい弁護士であれば、婚姻費用の妥当な金額や、それを踏まえてどこまでの手続をすべきかについて、的確なアドバイスができるはずです。

迷われている方は、ぜひ相談してみましょう。

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監修・執筆
寺林智栄(てらばやし ともえ) 弁護士
NTS総合弁護士法人札幌事務所。webメディアにおける法律関連記事の執筆・監修も多数手がけている。
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