医師の離婚における財産分与のポイントと留意すべき事項を解説

医師の夫または女医の妻として、離婚とその際の財産分与について考えている方がいるかもしれません。

この場合、特に懸念されるのは、共同で所有する財産や資産の分割です。夫妻が長期間にわたって共に築いてきた財産には、家屋、土地、預貯金、投資、事業資産などが含まれる可能性があります。

これらの財産は、離婚に際して公平な方法で分配されるべきですが、具体的な分配の仕方は個々の状況によって異なるため、一概には言い切れません。

ただ、医師の場合、高収入を得る可能性が高いため、財産分配の金額は大きな焦点となることでしょう。

ここで、医師の離婚と財産分与について詳しく説明します。

医者の離婚|財産分与について

財産分与の問題は、医者の離婚に当たって一般的に問題となる論点のひとつです。

医師の家庭が離婚をする場合には、財産分与に当たって特別に考慮すべき論点が存在するので、その点について解説します。

医師の離婚の場合でも、財産分与は2分の1ずつ?

財産分与とは、夫婦が共同で築き上げてきた財産を分ける目的で行われます。そのため、財産分与の対象となる財産の2分の1ずつを夫婦双方が取得できるように、財産が多い方から少ない方へと分与するのが原則です。

しかし、医師のような専門性の高い特殊な技能を持つ職業に就き、高額の財産を獲得したのだとすれば、それは本人の努力による部分が大きいことも事実です。

この場合、財産分与の割合は必ずしも2分の1ずつになるとは限らず、以下の裁判例のように傾斜を付けた割合が認定されるケースもあります。

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医師の財産分与の裁判例

例えば、医者の財産分与の裁判例として下記のようなものがあります。

①大阪高判平成26年3月13日

原則として財産分与の割合は2分の1ずつと解するのが相当としたうえで、夫が医師の資格を獲得するまでの勉学などについて婚姻前から個人的な努力をしてきたことや、婚姻後も医師として多くの労力を費やして高額の収入を獲得したことなどを踏まえて、夫と妻の財産分与割合を6対4としました。

②福岡高判昭和44年12月24日

夫が多額の財産を所有するに至ったのは、夫の医師・病院経営者としての手腕や能力によるところが大きいとして、1億円を超える診療報酬収入があり、個人の資産も1億円を超え、個人経営と大差のない実情の医療法人の資産も1億円を超えている事案で(ただし、負債もあり)、2分の1を基準とするのは妥当性を欠くとして、妻の受け取れる財産分与の額を2,000万円としました

上記のように、医師の離婚のケースで財産分与割合が認定される際には、夫婦双方が財産の形成にどの程度寄与したのかということが具体的に考慮される傾向にあります。

納得できる財産分与割合の認定を受けるためにも、富裕層に強い弁護士に相談することをおすすめします。

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財産分与の際に特に注意すべきこと

医師の場合、さまざまな形で資産を分散させて所有しているケースも多いことから、財産分与の対象となる財産の範囲を定めるのも一苦労となります。

財産分与を受ける側(多くの場合は医師でない方)が、支払う側に対して財産開示を求めて争うケースもしばしばです。

財産開示の請求があった場合には、財産分与の対象となる財産を適切に見極めたうえで、開示する必要のある財産は速やかに開示しなければなりません。

万が一「隠し財産」があることが判明した場合、財産分与がやり直しになります。

さらには、損害賠償責任を負ってしまう可能性もあるので、十分注意しましょう。

また、財産分与の対象となる財産については、必ずしも価値が明確なものばかりとは限りません。

たとえば不動産、未上場株式、貴金属、時計、絵画などは、専門的な観点から価値を評価する必要があります。

対象財産の価値評価についても、一度弁護士に相談したうえで、必要な専門家へのアクセスを試みることをおすすめします。

 開業医の場合にはさらに特別の考慮が必要

開業医の場合には、財産分与に当たってさらに追加で考慮すべき事項がいくつかあります。

たとえば、医療法改正により、平成19年4月1日以降は、出資持分ありの医療法人を新規に設立することはできなくなりました。しかし、それ以前から存在する医療法人の中には、「持分あり」医療法人が多数存在します。

婚姻後に設立された医療法人の出資持分は財産分与の対象となり、財産分与額の算定基礎となるため、実際に分与を行う前に、病院経営に支障が出ないかなどについてよく確認しておく必要があります。

また、開業医の場合は、個人の財産とは別に医療法人の財産も同時に管理していることになります。

個人財産と医療法人財産の区別があいまいになっていることもしばしばで、財産分与の際には両者をきちっと区分けすることが必要です。

開業医の離婚問題については以下の記事で詳しく解説しているので、併せてご参照ください。

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まとめ

前述した通り、医師と財産分与に関連する問題は、具体的な状況に大きく影響されるため、簡単に一般的に説明することは困難です。

夫妻の持つ財産や資産の種類や額、それを得るプロセス、婚姻の期間、お互いの収入差、子供の存在など、財産分与の判断に影響を及ぼします。

特に医師の場合、高収入を得ることが多いため、その収入や持っている資産の大きさが分配において重要な要素となることがあります。

そのため、専門家のアドバイスを受けることが重要です。弁護士や専門家は、個別の状況に基づいて適切な分配方法や解決策を提案してくれます。

医師との離婚における財産分与は、具体的な状況を詳しく検討し、専門家の助言を受けながら適切な対応を見つけることが不可欠です。

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執筆・監修
服部 貞昭
ファイナンシャル・プランナー(CFP・日本FP協会認定)
2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)
東京大学大学院 電子工学専攻修士課程修了
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